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灰色の瞳


第3話−2


「な、に誰……あぐっ――はッ!?」
 考える暇も与えずに、ずぶんっ、とサックを嵌めた男の性器が少年の後孔を貫いた。
 想定していたよりもいっそう長大な質量に中を擦りあげられて、少年の背中が跳ねる。
「か、はっ……!? は、はぐっ……なん……で、おに、さ……っ」
 無言のまま、男はぐぐ、と腰を押しつけ、引き抜く。
「やんっ、あっ! 待っ……ひゃあ、あ……っ!」
 中を擦られる感覚に少年は身悶える。内臓を引きずり出されるようなぞわぞわとした恐怖と、それにも勝る快楽。何より、いつもと違う圧迫感に怯える。
「に、さ……!? 誰、ちが……ッ」
「僕はここで見てるよ。相手が誰だろうと、感じちゃうんだ?」
 男は顔を横向けて壁に声を反射させる。
「いっ……、ひ、いだ、……あ、あ、あッ……!」
 根元まで挿れると入口の部分を突起部がゴリゴリと擦った。少年はぎこちなく震え、身体をこわばらせている。
<気持ち好いか?>
 初めて耳にする男の声に、少年の身体がビクリと跳ねた。
 それは男が用意した音声ドラマのCDの音源だった。物語の主人公は女性だが、女性の声は入っていない。主人公に対して渋い声の男性が語りかける一方通行の体で、主人公を嬲るといった内容だ。「ドS彼氏」というテーマで収録された声はだいぶ芝居がかっているが、混乱している少年はその違和感に気付かない。
<ほぅら、ここが好きなんだろう? もうこんなにぐちゃぐちゃに蕩けて……うねりながら俺を誘ってるじゃないか>
 男は自分自身が少年と繋がりながらも、少年が別の男に犯されているところを想像する。少年のぎこちない身動ぎが哀れだが、その抵抗が自分への忠誠に思えて心が満たされる。
「僕のより大きいだろ? 誰のおちんちんでも気持ち好くなっちゃうなんてひどいなぁ」
 言って、男はクスッと笑いながら腰を動かすとゆっくりと少年を責めた。
「ふぎっ……! う、そやだ……っ、おに、さんじゃな、」
 ぶちゅぶちゅ、ぐぢっ、と抉るように挿入していくと少年の身体は恐怖に震えた。
「き、ぁっ……! い、や……いや、いやいや、いやああぁっ……!」
 悲壮感を帯びた悲鳴が大きく開けた唇から溢れる。頭を左右に打ち振り、シーツを掴んだ手は前へ逃れようとしたが、中に嵌めたサックはずっぷりと埋没してそう簡単に逃れることはできない。
<嫌だと……? 嘘をつくな。中は俺のペニスにいやらしく絡みついて悦んでいるぞ>
 状況と音声が絶妙にシンクロする。男はじょじょに律動を速くしていく。少年はまだ戸惑い、身体は緊張したまま。
「や、やら……っ! こわい、や、誰……っいや、やだぁっ」
「とある学校の先生だよ。先生って呼んでごらん?」
「先生……やめて、もうやだ、こんな……いや、やだ、やだっ」
 制服を着た少年が教師に犯されながらも必死に拒絶する。AVによくあるシチュエーションだが、男は興奮を覚えた。
 サックをつけている分、自身はいつもより快感を得にくかったが、その代わり長く楽しめそうだ。
「ひうっ、ひうぅっ……!」
 少年は切なく泣き喘ぎながらも中で感じている。穴は普段より狭く、中の動きも平生とは違うのが男を高めていった。大ぶりのサックとはいえ、ビキビキと血を漲らせたものは張り詰めてキツい。
「やら、――やぁっ! や、いあ、あ、あ"んッ!」
<ずいぶん好さそうじゃないか。そぅら、もっと奥までブチ込んでやるよ……ッ!>
「あ"うッ――!! ぎ、いはっ、はぁ、あ、あはっ……きもち、くな……っおにぃさん、おに、……ひあ"ぁッ!」
 乳首を弄ると中が一瞬緩み、ずぷぷ、と深く飲み込まれた。その後のきつい締めつけは、男よりもむしろ少年を苦しめる。サックの外側の突起がゴリゴリと入口を擦る。
「あがっ!? はひ、ひぃっ!」
「イきそう? 制服を汚しちゃダメだよ」
「え……あっ!?」
 男は前に手を回すと少年の性器に何かを装着した。少年は目を見開き顔を歪める。
「ひっ!? な、に……、」
「射精制限は初めてだよね? 少し我慢して、後ろだけでイッてごらん」
 少年の性器の根本にはコックリングが嵌められていた。すでに勃起していたそれは真っ赤に腫れてはちきれんばかりだというのに、射精を堰き止められひとたまりもない。
「やめっ……! おちんちん痛い……くるし、よぉ……っあ"ッ!」
 涙目になる少年に構わず、男は少年の腕を掴むと後ろからバチュンッと突いた。
「ひはっ――!」
<ククッ、堪らないな。お前の身体、どれだけの男を狂わせてきた? お前も、気が狂うまで犯してやるよ>
 バヂュンッ、バヂュンッ、バヂュンッ!
 煽るような音声に合わせて、男の腰が激しく前後する。入口から奥までを何度も出入りするゴツゴツとした肉棒に、少年は背中を震わせ仰け反った。
「ひあ"ッ! あ"ッ! あ"あッ!!」
 身体の奥、突かれた部分が強い快感に痺れる。少年は達し、男をキツく食い締める。
「ひっ……! ――ひ、ひぁ……ッ、」
 痙攣する身体をひっくり返すと今度は正常位で組み敷いた。
 快楽に捩じ伏せられた少年だったが、力ない手を男の胸に押し当てなんとか拒もうとする。そんな健気な抵抗などものともせず、男は少年の尻を上げさせ、上から押し潰すように貫いた。
「うぐっ! ふっ! ぐぅ、うっ!」
<ああ、好いぞ……! すごく好い……っふふ、お前の子宮口を叩いてるの、わかるか?>
「ひ、ひぎっ……い、い、いだ、おく、くるじ……」
 少し成長した少年の最奥部を突くのは男の性器をもってしても難しかったが、サックの先端は容赦なくそこを突く。久しぶりの感覚に、少年の身体は驚いているようだ。
<俺の精子を欲しがってチュウチュウ吸いついてきてるぞ……淫乱め。どこまでもいやらしい女だ……そら、しっかり味わえ!>
 ゴヂュッ! ゴヂュッ! ゴヂュッ!
「ひや"ぁ〜〜ッ! やっ! あ! あ"ッ! あ"ああンッ!!」
 罰のように与えられる絶頂。前立腺を何度も擦られて、少年は目を見開いたまま大粒の涙を流しいやいやと首を打ち振るう。
「うくっ……っひ、おにいひゃ……見ちゃやだ……こんなの見ないでぇっ……」
 行為に夢中になっていた男は、はたと我に返る。
 少年は今、「教師に犯されている」のだ。その様を恋人に間近で見られていると思い込み、羞恥と罪悪感で泣き暮れている。男は暴漢になりきって恋人を犯しながら、恋人を他の男に汚される絶望を想像し倒錯感に酔いしれた。
<いやらしいな。中も外もヒクつかせて、乳首も硬くして……さっきから何回イった? おしおきが必要だな>
「ひっ……ひぅ、うくっ……いやですせんせ……も、やめて……っ」
 それでも身体は与えられた行為に染まっていく。元々充てがわれた音声が詰る通りに、少年の中は男の射精を促すようにビクビクとうねった。
 男の中に妙な思いが燻る。12歳の腕力が大人の男に敵うはずがないのはわかっている。現に少年はなけなしの力で抵抗しようとはしている。けれどその仕草はあまりにも無力で、かえって相手の嗜虐心を煽るだけだ。拒絶する少年の涙、嫌悪感に噛み締めた唇、それでも快楽を得てしまう痴態は欲望を加速させる。
 恋人が凌辱されるなど実際に起きたら怒りで気が狂うと想像し、想像が現実の頭を占拠した。

2018/05/31


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