Long Story|Short Story|Anecdote渇き
第2話−1
「なぁ御園、俺達1度してるんだぜ。あの時は望まない形でだったけど、でもそれで、俺達は今好き合ってるんだろう」
「……そうだけど。けど、どうすればいいの……、」
「前のでいうと、お前が下だけど」
沖が端的にそう言っただけで、御園は真っ赤になって俯いた。
御園が赤面症であることに沖が気づいたのは、まだつい最近のこと。初めてキスをしたあの日、正式に恋人同士になったあの時からだ。まさか自分の初めての恋人が男だとは、沖も予想していなかったけれど、沖と御園は「そういうこと」になったのだ。
プールでお互いの気持ちを確かめ合った2人はその場で何度もキスを交わし、暗くなった道を人の目を避けつつ手を繋いで帰った。
その翌日、御園は往生際悪くまた沖の目を逃れようと学校のあちこちを逃げ回ったが、屋上で捕まえるとそこでもまたキスをした。
学校のトイレで、放課後の裏庭で、時に大胆に部活のシャワーの合間にキスをすると、御園もとうとう観念したか、学校でも沖の接近を許すようになった。元々友人同士だった彼らのそんな他愛ない追走劇を気に留める者はいなかったので、完全に御園の自意識過剰だったけれど、沖は御園のそんな恥ずかしがりなところも気に入っている。
けれど正式に、恋人同士としてセックスをしたいと訴えると、御園はまた沖の前から逃走するのだった。
部活が終わった後、沖はなんとか御園を捕まえると、2人きりになった更衣室のベンチで御園に再度話を持ち掛けた。
御園が逃げ帰らないようにと先手を打って着替えて待っていた沖は、水着姿のままの御園をベンチに座らせた。御園も、2人きりとなれば観念したのかじっとしている。シャワーを浴びたばかりの濡れた御園の身体を、沖は大きなタオルで包んでやった。
「こうも逃げ回られたんじゃ、俺だって傷つくよ」
御園の濡れ髪を掻き混ぜながら、沖は溜め息をついてしおらしくそう言った。少しオーバーな演技を盛りこんだけれど、言葉にしたことは本当だ。
例の事件の時、四つん這いにされ抵抗もできない状態の御園に対して、後ろから挿入したのは沖の方だ。御園が自分に好意を返してくれたといっても、それすら強引に強いたように感じられて不安になる。あるいは、好かったとは言っていたけれど、あの行為が心の傷になっている可能性も頭をよぎった。
「お前が嫌なら逆でも構わない。俺、1回掘られてるし……いや、そもそもセックスが嫌っていうならしなくてもいい。何も言われないんじゃ、わからないだろ……」
ぼそぼそと言いながらタオルを丸めると、御園がクス、と笑った。
「……ごめん。沖とするのが嫌とかじゃないんだ。ただ……その、変じゃないか?」
「変?」
沖がきょとんとして御園を見つめると、御園は急にドギマギと視線を彷徨わせ、手にしていたゴーグルのゴムを弄ぶ。
「……俺、その、……あの時、すごい好かったんだけど、さ……なんかそれって、」
女みたいだろ。言って、御園は複雑そうに唇を噛む。茶髪から覗く耳が赤い。
「女役」もさせられた沖は、気持ちがわからなくもない。御園の中で感じながら、大学生にアナルを責められて同時に別の快感を得ていた。でも男の自分がそれを感じてしまうのは何だかひどく恥ずかしく、屈辱的で──ただ、沖は御園にそれをしているという背徳感の方が強かった。
「変じゃないよ、御園。そりゃ、好きでもないヤツとあんなことすんのは嫌だろうけど」
「……沖は、されてどうだったの?」
聞かれてドキリとする。正直、ちょっと好かったと言ったら御園はどう思うだろう。恋人同士となった今、少し複雑にも感じないだろうか?
「お、俺は……少し、気持ち好かった……ちょ、ちょっとだけな」
沖は嘘がつけないたちだった。
白状してから少し後悔する。御園はしばらくゴーグルをいじっていて、沖はその沈黙にハラハラしたけれど、少しすると御園は顔を上げて微笑んだ。
「そっか。沖がそうなら、俺が気持ち好くなっちゃってもしょうがないよね。ごめんな、恥ずかしかっただけだから」
言いながら御園は沖の手を握る。
御園の手はひんやりとしていて、自分がひどく熱を持っているように感じた沖は、その熱に自分の欲望をまざまざと感じて少しぞっとする。こんな欲望をそのまま御園にぶつけたら嫌われるかもしれない。
けれど、御園の口からは意外な言葉が告げられた。
「あの日からさ、ずっと、その、1人でする時は……沖に、挿れてもらうのを想像してたから」
「えっ……」
意外なほど直接的な言葉に、沖の心臓は大仰に跳ねた。御園は恥ずかしがりのくせに、時々こうしてカウンター・パンチを見舞うものだから参る。沖が顔を熱くする番だった。
「……お前、よくそういうこと言えるな」
「なんで、」
御園は心底不思議そうに沖の目を見る。
「なんでって……いや、いいよ。俺も同じだから……」
どうにも変わり者の御園に窮しながら、沖は御園の両手首をぎゅっと掴んだ。自然と御園が瞳を閉じてくれたので、沖は唇を合わせる。そうしながら、自分の熱が御園にも移っていくようにと念じた。
「……じゃあ、いいよな」
「えっ? ここでするの?」
目を丸くする御園の手を、自身の股間に持っていくと御園の目がビクンと震えた。
「あ……、」
「俺、このままじゃ帰れない」
「そんな……でも、」
御園の顔は再び赤くなっていくが、怯えたようにそっと沖の股間に触れていた手は、その山になった突端を柔らかく包みこんだ。ドクドク、と血が集まる。
「っ……、なぁ、頼むよ御園」
「沖……俺で、こんなに興奮してるの? 変なの……」
御園の声に挑発的な響きはないが、言葉で責められているようで沖は興奮する。その間も御園はほとんど無意識に、可愛い子猫でも見つけた時みたいに無心に沖のそれを撫でた。
「あ、ちょっ……マジでさ、ヤバいんだけどっ、」
「手、入れていい?」
沖は返事もせずに忙しく自分のベルトを外しファスナーを下ろすと、前を寛げた。下着にはもう染みができていて、それを見た御園は驚いたように口を開けて沖の顔を見る。お互い探るように見つめ合うと、ゴクン、と唾を飲んだ。
御園は無言のまま、下着の上から沖のものを扱いた。沖はその愛撫に感じながら、御園の股間に手を伸ばす。
ぴっちりとした水泳着を脱がすのは容易でないから、やはり布の上から撫でてやると、そこはやがて沖のものと遜色なく膨らみ、やがてシャワーの水とは違う、ぬめった湿りを帯びた。
「沖……キスしたい、」
せがまれ、唇を重ねる。学校で御園の方から求めて来るなど初めてのことで、沖の胸は躍る。下着がすっかり窮屈になると御園の手はとうとう沖の下着の中に伸びて、硬くなった幹を直接握った。すでに先走りが垂れており、指先で亀頭を撫でられると声が出てしまう。
「おっきぃ……沖の、太くて長いね」
「言うなよ、」
御園の口から発されるのが信じられない思いで沖は声を上擦らせる。御園も沖にペニスを扱かれ、時折唇を舐めたり甘い声を漏らした。その姿は沖の目に、あまりに淫靡で──。
「この太くて長いの、これからお前の中に挿れるんだからな」
沖は少し意地悪な気持ちでそう言うと、御園の身体をタオルを敷いたベンチに押し倒した。
2019/09/22
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