口出し

(「誘う」続き)


口出し




私の母は、私と性格がそっくりだ。というか、おんなじかもしれない。

「ミオ、と、彼氏くん?」

「げ、お母さん……」

ある日のショッピングデートで、私は母と出くわした。母は隣にいた研磨くんをまじまじと見るとふーん、と声を漏らしてその場を去った。
よ、よかった。

「ミオ……?」

「あ、ああ、ごめんね、研磨くん。行こうか」

これが、ことの発端だった。





翌日の夜、不意に母に話しかけられた。

「ねえ、ミオ。なんであの彼氏くんにしたの?」

「え?」

私は夕飯を作る母を見た。

「だってさあ、もっとこう……いつも話してる先輩の、クロくんみたいな明るい人の方が、いいと思うんだけど」

「……でも私は、研磨くんが好きなんだもん」

私はぼそっと答えたけど、母はお構いなしに続けた。

「だって、研磨くんって子、何を考えているかわからないし、」

「っ! お母さんの好みは関係ないでしょ? 私が好きなのは、研磨くんなのっ!」

イライラ、した。
いくら母親でも、ここまで干渉するのは如何なものか。
私は気づけば家を走り出ていた。

「ミオ?」

「もう知らないっ。帰らないからっ!」

初めて、家出した。外は雨が降り始めていた。





部活終わり、一人で帰路にたつ。今日はミオは先に帰ったし、クロも用事があるからと一人だった。
ぽつ、ぽつ、と傘に雨が落ちる。雨の日は嫌いだ。傘を差さなきゃいけないから、ゲームができない。
早く帰ってスマホをいじりたい。そう思っていた時だった。

「っ! ミオ……?」

どしゃ降りの中、傘も差さずにとぼとぼと歩くミオを見つけた。
ミオはおれの声に反応し、おれをみると泣き出した。

「ミオ?」

「研磨くんっ」

そしてミオはおれに勢いよく抱きついてくる。

「え、え?」

「研磨くん、今日、研磨くん家、泊めてくれないかな?」

ミオはおれを見上げて力なく笑う。何かあったのだろうか。いや、今はそれより。

「分かった。とりあえず風邪引くから、うちで風呂に入ってから、話聞く……」

そしてミオはおれの家に泊まることになった。



風呂に入ったミオから話を聞いた。曰く、母親と喧嘩をしたそうだけど。
そもそもの原因がおれにあるときいて複雑な気分だった。

「研磨くん? 私は、研磨くんが好きだからね?」

「でも、」

「あーもう! 研磨くんにはたーくさんいいところがあるんだからね!」

にこ、と笑うミオに申し訳なさはどこかに消えて、おれはミオをそっと抱き締めていた。

「おれも、ミオが好きだよ」



――――――――
千明さまリクエストです。
研磨くんで「誘う」続き、母親に口出しされ家出する切甘です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!



160412