見違える

(「間違える」続き)



見違える



霜月という女の子を、木兎さんが男と間違えてバレー部に勧誘してから数日がたった。いまだ木兎さんは霜月が女の子だということに納得がいかないらしく、"もったいないよなー"なんてこぼす始末だ。
確かに彼女は運動神経がよかった。俺は今まざまざとそれを見せつけられたのだ。

転びそうになった女の子を、間髪いれず抱き止めた霜月は、なるほどどうしてそこいらの男子よりも運動神経がよかった。それから、助けた女の子が霜月を見る目と来たら、王子さまに遭遇したかのような、恋する乙女のそれだということに気づいた。
霜月は霜月で、そういう風に見られることに慣れているのか、至って普通に女の子に笑いかけていた。

「気を付けてね」

「あ、はい」

今の一言で完全に女の子は霜月に心を奪われたようだった。なにせこの日以来この女の子が霜月に会うたびにお礼をいうようになったのだから。それから何故だか俺は、学内で霜月に遭遇する確率が高いようだった。もしかしたら行動パターンが似ているのかもしれない。霜月は常に女の子に囲まれていたし、告白されることも少なくなかった。
俺からしたら霜月はどう見ても女の子だというのに。



そうして至って普通の日々を過ごしていた俺と霜月は、とある放課後に顔を会わせた。たまたまグラウンドに用事ができた俺は、そこで霜月と出くわしたのだ。どうやら運動部の助っ人をしているらしく、珍しく額に汗を滲ませていた。

「あ。こないだはどうも……霜月、さん?」

「こちらこそ」

爽やかな笑顔を浮かべる彼女は、この前とはまるで別人のように見違えてしまう。確かに、彼女が男と間違われるのは無理もない、と。

「霜月はいつも大変そうだね」

「え、私が?」

彼女自身は気づいていないようだけど、彼女は常に女の子に囲まれて羨望の眼差しを受けて、男のように扱われて。俺から見たらすごく大変そうな生活なのに、霜月はそんなこと気にするそぶりも見せず、ただにっこりと笑顔で俺の話を聞くのだった。



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穂香さまリクエストです。
赤葦くんで「間違える」続きです。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!



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