理由

(「本気」続き)


理由




ある日の朝練前の部室にて。
俺は及川の姿を見てぎょっとした。顔には痣や傷があって、体にも至るところに傷があったからだ。

「及川お前、なにしたんだ?」

「岩ちゃん? あー、転んだ☆」

てへ、何て舌を出して言われてもかわいくねえよ。出掛けた言葉を飲み込んだ。

「まさか、問題起こしてねえだろうな?」

「ないないない! 俺は断じてなにもしてないよ?」

先程とは違う物言いに、俺はそれ以上追求するのをやめた。



「霜月さん?」

「あっ、岩泉くん……」

着替えを終えて体育館に向かえば、一年上の先輩がいた。確かこの人は及川がしつこく絡んでいた気がする。

「バレー部に用っすか?」

「あ、あのね。及川くんに……差し入れって言うか……」

俺は霜月さんの手を見る。握られた紙袋に弁当箱が見えた。
……こんなまじめそうな人が、及川に差し入れだなんて、何かあると感じた。
そういえば、及川は怪我をしてたっけ。

「あー、もしかして霜月さん、及川の怪我の理由、知ってます?」

俺の言葉に霜月さんはビクッと肩を震わせたあと、ゆっくりと口を開いた。

「昨日の帰り、私を不良から庇ったの。でも及川くん、やり返さなかったんだよ!? それから……」

霜月さんはそのあと顔を赤らめて口ごもった。
あー、及川らしくもねえ。どうやら及川の霜月さんへの思いは本物のようだ。この人は気づいていないようだけど。

「霜月さん、及川のこと、どう思って……て、及川……」

「! 及川くん!?」

話の途中で現れた及川に、俺は気まずさを感じた。
霜月さんは及川を振り返る。

「ミオちゃん、岩ちゃんに話したの?」

「っ、ごめん、でも……」

霜月さんはばつが悪そうに俯いた。
及川は霜月さんを見てため息をつく。

「はー。まあいいよ。で、ミオちゃん、何か用?」

諦めたような開き直ったような物言いに、霜月さんは及川をおずおずと見上げる。

「及川くん、これ、差し入れ。それからさ……」

霜月さんは俺の方を見る。その顔を見て俺は彼女の思いを悟ってしまった。あ、やばい。俺、邪魔か?

「ミオちゃん?」

「っ、私っ及川くん、好き、だから……付き合って……欲しいな、って」

尻すぼみに小さくなる霜月さんの声。及川はぽかんと口を開けて固まっていた。

「お、俺、先行くわ」

そうして俺は、顔を見合わせて赤面しあう二人を置いて、朝練へと向かった。


――――――――
千明さまリクエストです。
及川くんで「本気」続き、及川くんの怪我を心配して差し入れを持っていき岩泉くんに出くわし、怪我の理由を知られるお話です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!


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