不器用くん不器用くん
バレンタインに、幼馴染みから告白された。しかも手作りチョコケーキと共に。
それまでのバレンタインといったら憂鬱なイベントで、幼馴染みのミオが毎年誰かにチョコを渡すのが心底嫌だった。
「ねえ、賢二郎?」
「あ、うん。なんだっけ」
幼馴染みとはこんなに遠い存在だっただろうか。
いざ付き合い始めてみたら、俺はミオが好きなものも、嫌いなものもよく知らない。
いや、知ってはいるものの、それは幼い頃の記憶なので、今現在には活かせないのだ。
「賢二郎!」
「な……!?」
二人で歩く帰り道、考え事をしていた俺の手を取り、ミオは俺を止まらせた。
「なに?」
「なにじゃない。賢二郎、私が嫌いになった?」
「は? なんでそうなるの」
「だって賢二郎、ここ最近私を見てくれないよね」
そんなに俺はミオを避けていただろうか。いや、そんなはずはない。
避けてはいない。ただ、会わせる顔がないのだ。
「その、だってミオ。今日ホワイトデーなのに俺……」
「賢二郎?」
「あーもう! 俺、ミオに何をあげれば良いのかわかんなくて、結局なにも用意してない」
隠すだけ無駄だと思ったのだ。
正直に言って誤解をとくほうが得策だと。
カッコ悪い。本当に、情けない。
「なんだ。そんなこと……」
「そんなことって……だって俺、なにも用意してない」
俺はうつむきミオから顔をそらした。
なまじ幼馴染み期間が長かったからか、今さら恋人らしくすることが難しいのだ。
「ならさ、賢二郎」
「……なに」
「一緒に写真撮ろ。それから、今日はうちに来てよ。一緒に宿題しよう」
「は?」
よくわからない。
そんな普段と変わらないことがミオの望みなのだろうか。
「ミオ?」
「ほら、幼馴染みとしては一緒に写真撮ったり勉強会したりしたけどさ。恋人としてはまだじゃない?」
つまりはそうだ。
何をかっこつけようとしていたのだろうか。
幼馴染みから恋人に変わったからって、別に俺自身が変わる必要はないというのに。
「まあ、仕方ない。ミオがそうしたいって言うなら」
幼馴染みのときと同じように、だけどちょっとだけ踏み込んで。
そうやって新たな君を知っていけたら。
そんなホワイトデーの夜は更けていくのだ。
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「
不器用さん」と対のお話です。
170310