嫌われてるかと


(「お誘い申し上げます」続き)

嫌われてるかと




夏の気配が強くなってきた、そんなある日。私は恋人の飛雄くんの部活の先輩にあたる、隣のクラスの澤村くんに呼び止められた。

「霜月、ちょっといいか」

「あ、うん」

少し言いづらそうにする澤村くんに首をかしげる。

「今度、東京合宿があるんだけど……期末試験で追試になると行けなくて。だから影山の勉強は部活の一、二年で見ることになったから、霜月には、甘やかさないでほしいんだ」

「……分かった」

それが他ならぬ飛雄くんの為だというなら、私は心を鬼にすることに決めた。





最近ミオが冷たい。嫌われたのだろうか。
一緒に帰り道を歩いても、いまいち話が盛り上がらなかった。

「悪いな、ミオ。期末の勉強ばかりで」

「ううん、別に。追試にならないようにしてね」

ほら、やっぱり。
いつもは笑って"がんばって"とか言ってくれるのに。
俺が勉強できないから、きっと、だから嫌われたんだ。

「ミオ、俺が嫌いなら、はっきり言えよ」

「違うよ。そんなことない」

ミオはあまり動揺するようすもなく言う。なんだよ、それ。

「ミオなんかには、わかんねえよっ、もういい!」

そうして俺は、ミオを置いて帰路を走り出す。
くそ、くそっ。
悔しくて、情けなかった。





「影山、入り口に霜月、居るけど?」

翌日の朝練で、体育館の入り口にミオがいた。俺がミオを無視していたら、澤村さんに心配された。

「いいんっす。ミオは俺が嫌いなんで」

「? 何でそうなるの?」

澤村さんは不思議そうに俺を見る。

「だって……俺が勉強できないから。だからミオ、俺を嫌いになったみたいで」

もごもご、と答えたら、澤村さんは驚いたように返す。

「それは違うと思うぞ。というか、期末試験の勉強のために、甘やかさないでって、俺が言ったせいかもしれん……すまん、影山」

気づいたら駆け出していた。

「ミオっ」

「飛雄く、え?」

体育館の入り口にいたミオを抱き締める。疑って悪い。好きなんだ。好きだ、ミオ。

「わりい、誤解してた。俺、勉強頑張るから。ミオ、ありがとな」

言えばミオがおもむろに泣き出す。

「飛雄くん、ひっく、私、良かった〜」

嫌われたかと思ってた。でもそれは、他ならぬ彼女からの愛情だった。



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千明さまリクエストです。
影山くんで「お誘い申し上げます」続きです。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!


160520