熱を持つ

(「」続き)


熱を持つ




霜月が俺のためにノートをとってくれている。
知るや否や、恋に落ちていた。同時に、申し訳なさに襲われて、授業を居眠りしないようにと努力するようになった。

はずだった。

「ん、あれ?」

気づいたら寝入っていて、案の定机にはノートが置いてある。
何だかんだ俺は、霜月がノートをとってくれることに安心してしまっているのかもしれない。
それにしても。
霜月を思い出すだけで胸がドキドキする。こんなに恋い焦がれてる俺は末期だ。





田中くんは後輩思いだ。クラスの女子は怖いとかお調子者とか言うけれど、私はそうは思わない。

それでも、田中くんはなぜ居眠りをしてしまうのだろうか。心配になって、田中くんの先輩である菅原さんを訪ねた。

「菅原さん、あの! 私、田中くんのクラスメイトで――」

「うん?」

意を決して口を開く。

「田中くん、居眠りばかりで。何でなのかなって……」

「あー、新しく入った一年がね、五時から朝練してるんだよ」

「五時から……!?」

初耳だった。
何でも、その一年生は主将の澤村さんに入部届を受け取ってもらえず、認めてもらうために澤村さんに秘密で朝練をしてるらしい。

田中くんが手伝うのは、ただただ後輩のためだけ。本当にそれだけなのだ。

「教えてくれてありがとうございます」

朝五時からとなると、お腹すくよなあ。
私はあることを思い立つ。



翌朝、軽食を作って体育館に行く。朝五時の空気は冷たく、吐く息は白い。
冷えた手を擦り会わせ、体育館前まで来る。
だけど誰もいなかった。体育館すら空いていない。

「なんだ……」

がっかりした、というより、何だかばかみたいだと腹が立ってしまった。
はりきって軽食を作ってきたのに。

「あれ、霜月?」

「えっ?」

帰ろうときびすを返したとき、田中くんと出くわした。
息を切らし鼻を真っ赤にした彼は、体育館の鍵らしきものを持っている。

「うーさみい。寝坊した」

がちゃがちゃと鍵を開ける田中くんの背中を見つめる。大きな背中だ。

私がボーッとしていたら、いつの間にか菅原さんがいて、私に耳打ちする。

「田中、鍵当番かって出たんだよ」

ぽうっと体が熱を持つ。
気付いた時には彼から目が離せなくなっていた。



――――――――
千明さまリクエストです。
田中くんで「」続きです。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!



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