恭弥と骸が出て行った空き教室ではリボーンたちが今後について話し合いを続けていた。
「今後についてはまず明日くるみに話してから決める」
「でもすぐ受け入れられるんスかね……一般人のくるみには実はマフィアの血が流れてる、なんて」
「にわかには信じられねぇだろうな。だとしても、話して納得してもらわなきゃ守れるもんも守れねぇ」
世間一般が想像するマフィアは、武器や人身、麻薬の売買や殺しというイメージが強い。実際にそういった組織は存在するけれど、ボンゴレは違う。どうにかそのあたりをうまく説明して理解してもらわなければ。
「……くるみといえばあの男も気になんね?」
「チッ、あの男か」
山本の発言に真っ先に反応したのは獄寺だった。ゼロと名乗った、見目麗しい外国人の男。ひと目で西園寺が虜になって毎日のように話を聞かされるいまいましい男。
思わず食ってかかったときに感じたただならぬ雰囲気は、およそ一般人とは思えなかった。
「確かに、あの野郎からは似たニオイを感じた」
「おい待て、アイツってのは誰だ」
「前に沢田と校門で抱き合ってた男ッス。そいつ、くるみにちょっかいかけてるみたいで……最近は連絡取り合ってるみたいなんスよ」
「ンなことはどうでもいい。同じニオイってのはどういうことだ」
目を鋭くさせたリボーンはヒットマンの顔をしていた。それに気づいた獄寺も表情を引き締め、もう一度腰をおろす。
そうして自分があの男の胸倉を掴んだとき、一瞬だけ向けられた殺意に身を震わせたことを話した。
「なんでもっと早く話さなかったんだ! もしそいつがくるみの殺害を企ててたらテメーらどう責任取るつもりだ!?」
「すっすみませんリボーンさん! 一瞬だったし野球馬鹿は何も感じなかったって言うんで俺の勘違いかと……本当にすみませんでしたっ!!」
珍しくリボーンが声を張りあげたかと思うと、獄寺に向かって引き金を引いていた。間一髪のところで銃弾を避けた獄寺は、そのままリボーンに土下座をする。
「オメーら、今後その男に近づかないよう言っておけ」
自分からもきつく言っておくとだけ残してリボーンは窓から出て行った。
しん、と静まり返る教室内に獄寺のため息が響く。これまでどんなことがあろうと感情を表に出さなかったリボーンが声を荒らげるとは思っていなかった。
「……今まで以上にくるみを気にかけねぇとだな」
「ああ。沢田の野郎も来やがったし何しでかすかわかったもんじゃねぇ」
「やっぱ雲雀たちにも協力してもらったほうがいいのではないのか?」
「芝生、テメェ馬鹿だろ。あいつらが素直に動くはずねぇだろうが。そんなヤツらに期待するだけ時間の無駄だ。俺たちだけでくるみを守りゃいいんだよ」
「修行して強くなったオレらなら何かあっても大丈夫っすよ! もちろん何もないほうがいいんすけど」
頼もしく笑った山本。しかし彼の目は笑っていなかった。
ゼロとかいう男が何者で、どういう理由で西園寺に近づいたかなんて正直どうでもいい。恋い焦がれる彼女が自分以外の男のことばかり考えている現状が許せなかった。謎の男から西園寺を遠ざけるなんて生ぬるいことせずにさっさと始末してしまえばいいのに。
山本すら気づかない奥底で、どす黒い感情が静かに大きく広がっていく。