Fraternité−1


LibertéÉgalité続き
元社長バーソロミュー(+サンソン、ギャラハッド)×主


東京に移り住んでから、早くも数か月が経った。すっかり季節は冬となり、ルクセンブルクほどではないがきっちり寒い季節がやってくる。

退職する前から工事や保健所・役所などの手続きを進めていたこともあり、秋の終わりには住みたい街ランキング上位常連の東京郊外の街でカフェをオープンすることができた。

カフェは古民家風というやつで、伝統的な和風建築だった雨宮家本邸の屋敷の半分ほどを改装し、和風の庭園も整えたものだ。古民家風といっても、テーブル席とカウンター席だけの洋風のスタイルであるし、出すものもコーヒーや紅茶など洋食が多い。抹茶系のものも一応用意はある。
テラス席は庭園に面した伝統的な茶屋を模したテーブル席で、パラソルも赤い和傘式のものを使用している。
席数はトータルで30席、内カウンター席が6席で、テラスの4人席が2組、2席1組のものが8組となっている。
この街の個人経営のカフェとしてはかなり席数が多い部類に入るだろう。


ここまでの店を整えることができたのも、大掛かりな消費をせずに貯蓄してきた唯斗の給料や、父が雨宮家の資産を粗方唯斗に譲渡することでネグレクトの免罪符にしていたことなどが功を奏した。

ちなみに、最新の機器を使ってコーヒーを提供しているが、コーヒーも紅茶も唯斗とサンソンがそれぞれ手配したものだ。フランスや英国、ベルギー、ルクセンブルクの銘柄が揃っており、チョコレート菓子などもそうだ。

そして料理だが、実はこちらは人を雇っている。カウンターの内側はコーヒーや紅茶など飲料を用意するスペースであり、カウンターの背後の壁の裏側には厨房があり、こちらはキッチン担当の人物が基本的に使っている。
サンソンは飲料の用意が主な担当でたまに接客に入り、唯斗は接客とサンソンの補佐を行う。また、休日はギャラハッドも接客に入る。不慣れな日本語ではあるが、サンソンとともに上達スピードは速い。
なお、この店の対応言語は唯斗が日本語を主に使うほか、英語とフランス語を3人とも使え、加えてサンソンは簡単なオランダ語を、唯斗も簡単なドイツ語を使うことができる。といっても、さすがに英語も喋れずに日本にやってくるオランダ人やドイツ語圏の観光客はほぼいないため、この二つの言語の出番はなさそうだ。



そうして客の入りも順調で、経営も軌道に乗った中、年末に向けて冷え込みが厳しくなってきた11月の終わりのことだった。

平日午前中だけあって客足は落ち着き、店内の客は席数の3割いるかといったところだ。多くは地元の人々か観光客である。


「サンソン、いったん休憩入っていいぞ」

「分かりました、そうします。そろそろエミヤも来ますね」

「あぁ。玉藻さんの手が空いてたら昼飯作ってもらえば」

「そうですね。ギャラハッドの分もお願いしておきます」

「頼んだ」


厨房に入っているのはエミヤと玉藻の二人で、二人ともこの街で様々な店をかけ持っている。非常に優れた腕の持ち主であることから、この街に詳しい者は「この店にもエミヤさんと玉藻さんいるんだな」と言ってくるほどだ。

客入りが静まったため、サンソンには先に休憩に入らせる。じきに午後の担当であるエミヤが出勤してくるだろう。玉藻は午前中の担当だ。
ギャラハッドは今日は午前中で大学の授業が終わるため、昼食を家で取る。そういうときは、本邸の裏にある普通の一軒家の別邸からこちらに回ってきて、厨房で食事をして別邸に引っ込む。
和風の本邸のうち、別邸と渡り廊下で繋がる区画は唯斗が寝室としており、サンソンとギャラハッドは現代風の別邸を居室としている。普段の食事などは別邸を使っており、本邸は唯斗が使う区画以外はカフェに改装されていた。

そうしてサンソンが別邸に下がってすぐだった。来客を告げる扉のベルが鳴り、視線を向ける。かつて引き戸だった部分は押戸に改装されていた。


「いらっしゃいま…えっ、」

「やあ、久しぶりだね」


店内に入ってきてにこやかな笑みをこちらに向けたのは、なんと、英国の大企業キャメロットグループのCEOであるアーサー・ペンドラゴンその人だった。



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