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「……………へ、」


今度はその蒼の反応に、俺が固まる番だった。

(この反応は、まさか本当に…?)

予想してなかったわけじゃない。
でも、そんな反応をされるとは思ってなかっただけに、ショックを受けた。
すぐに言葉を返せない。

(…本当に、)

キスマークが、ある……?
身体に巻いたタオルを握る手に、力が入る。
なんとなく顔を見ることができずに俯いていると、ぽつりと囁くような声。



「…まーくん、何か俺に隠してること、ある?」


その言葉に、顔を上げた。
無意識か意識的か、彼が俺から視線を逸らして、鎖骨らへんの浴衣の襟元を握っているのを見る。
聞いてきたのは蒼の方なのに、俺の方を見ようとしないその姿に…首を傾げる。
怪訝に眉根が寄った。


「隠してることって、…」


あるのは、蒼の方なんじゃないの?
そう問おうとして、言いかけて、声に遮られた。



「…誰かに、俺のこと聞いた?」

「へ?」



その言葉に、またもや首を傾げることになる。
蒼の言いたいことが理解できない。
何を聞かれているのか、わからない。
そんな俺の反応に焦れったくなったのか、彼は顔を上げてこっちを見る。

複雑そうな表情を浮かべる蒼に、どきりとした。

その綺麗な唇が言葉を紡ぐ。



「まーくん。俺が寝てる時に、椿ってヤツに会った?」


その問いに、無意識に身体が反応する。


――柊様を椿様に会わせたと知られたら――


あのスーツの男の人の声が脳裏に蘇る。


(え、っと…、)


素直に答えるわけにもいかなくて、どう答えようかと一瞬迷って首を横に振ろうとしたのと同時に彼の声が答える。


「…監視カメラで見たから知ってるんだけど」

「…あ、」


若干不機嫌そうな表情。…先に言われてしまって俯く。


「どうせまーくんのことだからアレを庇おうとしたんだろうし、…今はそれどころじゃないからいいや」と呟く声に、余計に顔を上げられなくなる。


「…まーくん、答えて」


その真剣な表情に驚いて後ろに下がると、トンと肩が何かにあたる。
着替えたものを入れる棚だった。
これ以上後ろに下がれない。


「椿って人間に、何か聞いた?」


……探るような冷たい目が、低い声音が怖かった。
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