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「ぁ…あお、い…?」
なんで、そこまで。
首をふるふると横に振ると、それほど緊張していたのか強張っていた表情を緩めた彼は慰めるように俺の頬を撫でる。その気遣うような触れ方に、一瞬目をつぶった。
「…ごめん。怖がらせた」
「……」
抱きしめられて、髪を優しく撫でられれば、少し和らいだ空気にほっと息を吐いた。
怖かった。
蒼の冷たい目が、声が、いつもと全く違って…怖かった。
身体が震える。目を瞑っていると、心底申し訳なさそうに「ごめん」と呟く声。
「…でも本当に俺が脱がないのは、そういうのじゃないから。安心して」
「……うん」
納得はできなかったけど、一応頷いておく。
顔を上げれば、優しく微笑まれて何も言えなくなる。
(…そうだ。何があったかなんて、元々俺が無理に聞いていい話じゃない)
そう自分を納得させて、手を引かれるままに浴場に足を踏み入れた。
促されてそこにあった椅子に座ると、最初に手にかけて温度を確かめてから俺の上に温かいシャワーをかけてくる。
「…わ、ぷ」
口と目を閉じて水が入らないようにしていれば、可笑しそうに笑った蒼がシャンプーで髪を洗ってくれる。
ごしごし。
頭皮に触れる指の感触。
泡立つ泡が髪にまとわりつく感覚。
案外人に頭を洗ってもらうという感覚は気持ちよくて、くすぐったい気持ちになった。
…まあ、それでも友達に洗ってもらうなんてやっぱり変な感じはするけど。
「…わ、」
気のせいか、いつもの倍くらいのシャンプーが顔に垂れてくる。
う、なんかすごく多い。
どろりと流れてきた泡が口に入って苦い。
「…はは…っ、苦しそう」
「あ、…ッ、う…」
わざとだったらしい。
文句をいいかけてすぐに口を噤んだ。
だめだ。今、口を開いたら大変な量のシャンプーが入ってくる。
楽しげな声で笑う蒼に、むっと眉を寄せる。
なんだろう。今日の蒼はいつもより、よく笑う。
「流すよ」
そんな声がして上からお湯が降ってきて、泡が流れていくのがわかる。
キュッと蛇口を締める音がして、シャ―ッとお湯の流れる音が消えた。
終わった、…のかな。
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