蒼の八つ当たり1

***


部屋の中に、何度も何度も腰を打ち付ける、淫らで濡れた音が響く。
今している行為を再認識させるように肚のナカをぬぢゅぬぢゅ性器で摩擦し、結合部からわざと卑猥な音を大きく鳴らすようにして腰を動かされる。堪えようとしても漏れる自分のみっともない声が、蒼の腰の動きに反応して感じながら相手の望むようにびくびくぎゅうぎゅうする身体が嫌で、こんなの現実じゃないと思いたくて、ぎゅっと目をつぶった。


「っ、!あぁ゛っ、!や…っ、ぅ、ぐ…ッ、」

「しょっぱ」


生理的に出る涙をぺろりと舐めて、蒼は不機嫌だった顔を少し和らげる。

ああ、もう嫌だ。

――――――


学校で何があったのか知らないけど、帰宅した蒼は怖いくらいの無表情で「誰も入れるな」と外の誰かに言っているのが聞こえた。

いつもと雰囲気が違う様子が、怖くて。


「…――っ、」


その冷たい瞳に気圧されて、動けない。
後ずさった俺を見て、ぴくりと眉を動かす蒼にしまった、と思った瞬間、腕を引っ張られて押し倒された。
手首につながれた鎖が引きずられて音を鳴らす。


「…っ、あお、い、何…っ、ん…ッ」

「……」

「は…っ、ぁふ…っ」


息が出来ない。
塞いできた唇に呼吸もできないくらい激しく口内を舌で荒らされて、酸欠で視界がぼやける。
涙が零れた。


「んぁ…っ、は…ッ、や…っ」


舌の絡まりに応じて鳴る水音にカッと頬が熱くなる。
ぬるぬると擦れる、熱い吐息まじりの行為。
口の端から、唾液が途方もないほど零れた。
性器がひんやりとした何かで包まれ、すぐにそれが手だと気づき、いつの間にかおろされていたジッパーに動揺する。


「まーくんの、すごいぐちゅぐちゅ言ってる」

「や、やめ…っ、ぁ゛、痛、ぁあ゛…っ」


嫌なのに。

握りこんだ性器を乱暴に上下に擦られ、次第に硬くなってしまう。
指の腹で敏感な裏筋や尿道口を擦られ、先走りで濡れ始めた性器を弄られ続ければ腰が無意識に動く。様々な握り方で扱かれ、動かされる指によって股間から頭に響く甘い痺れとか、我慢しようとしても口から漏れる声とか、蜜の量を増して鳴る卑猥な音に耳をふさぎたくなる。

嫌だと訴えようとして、目が合った。
いつもみたいな欲情した瞳じゃなくて、何の感情も見えない冷たく無機質な瞳。


「な、なんで、怒って、ひゃぅ…っ、ぁ、う、ゔ…っ、」


嫌だやめてくれと首を振りながら、蒼の胸を手で押すと陰嚢をぶるぶる揺さぶって揉まれ、びくびくと尻が揺れた。
腰全体に甘い痺れが走る。下腹部の奥にジンジンとした熱が集まった。


「俺には、まーくんがいるってのに…、」

「んぅ…っ」


首筋に口づけられ、ちゅぅと吸われる。
声を上げて身を引こうとした瞬間に、ズボンと下着を一緒に膝まで下げられた。
ヌヂュヌヂュ性器を嬲っている指が離れたと思ったら、今度は無造作に後孔につっこまれた。
きつい肉壁の抵抗を押し退けて、ずぶずぶと指が入ってくる。


「ぁ、ぅ…っ!や…っ、ぁああ゛…っぁ…っ」


痛い。痛い。

それなのに毎日毎日嫌というほど無理に拡げられるソコは、絡みつく肉壁を滅茶苦茶に指で掻き回されたらすぐに解れてくる。
ぐちゅぐちゅっ、グチャグチャ…ッ、


「ひ、ぅッ、ぁ、!ぅ、ゔぁ…!!ぁ――ッ」

「…可愛い」


指を締め付ける内壁に逆らうように強く擦りつけられて捏ねくり回され、細かく内股が痙攣する。
一度射精して、でも手の動きはとまるどころか弱いところを執拗に擦って速くなり、淫音を激しくしながら刺激を与え続けてきた。


「ひ、んぁ、いっや、ぁ、ぃ゛」


じゅぷじゅぷ、
ぬちゅぬちゅっ、
先走りを指先に絡めながら器用に扱かれ、開いた脚を自然とピンと伸ばし、快感のせいで全身に緊張が走る。うまく呼吸が出来ない。


「ぁ゛…っ、お、ぃ…ッ、も、ぅ゛、や゛ぁ゛、あぁ゛ぅ…ッ」

「……」


縋っても、首を横に振っても全然やめてくれない。
嫌でも永遠と思えるほど与えられ続ける快感に目を瞑り、涙を流した。
肚のナカに指を根元まで差し込まれ、吸い付く肉壁をヌヂュヌヂュ擦って掻き回され続ける。

それと同時に、性器もぐちゃぐちゃにもう片方の手で扱かれる。
後孔で執拗に前立腺を擦っては狭い肉を押し広げるように動く指二本だけで精一杯なのに、ドロドロになった性器を上下に擦る手も止めてくれなくて、逃げることさえできずにただされるがままだった。
性器に触れた手が、トロトロの蜜を垂らしている亀頭をくりくりして裏筋を擽るように指の腹で擦る。

また、またイク…っ。

ひっ、と悲鳴に似た上擦った声が漏れた。


「やめ…ッ、やだ…っ、や、だ…ぁ、ぁゔ、っ」


性器と後孔に同時に与えられる快感に、狙ってイイとこばかり擦りあげてくる指に、びくびくと足が震える。
先走りが多すぎて、尿道口から溢れた透明な粘稠液が竿の側面を伝ってぼたぼたと床に零れていた。
背中がのけ反り、腰が浮く。


「嫌じゃないくせに」

「…そ、ん゛、ぅ゛、ぅ、な…っ」


ぼろぼろと泣いても、そう冷たい声音で呟いて蒼は手を止めることさえしない。
ナカを拡げるようにヌチ゛ュヌチ゛ュ音を鳴らしながら何本もの指が荒々しく擦りつけるように動いて、それが骨盤全体に狂おしいほどの快感を伝えて刺激する。



「ひ…っ、ぅ…ッ」


ぼろぼろと声を押し殺して涙を流す。
出来ることなら、今すぐ逃げ出したかった。


「まーくん、……俺の可愛いお姫さま」

「んぅ…」


うっとりとした顔でぺろりと唇を舐められて、ぞくりと背筋が震える。
唇を重ねられて啄むような口づけと同時に、いつの間にかズボンを全部脱がされ、無防備になっていた脚をМ字に開かれた。


「ぁ…っ、や…ッ」


蒼の目が開かれた股の間に向けられ、羞恥心で頬が熱くなる。…蜜を零しピクピク屹立している性器も、グチャグチャ指で弄られまくってとろとろになり、誘うようにひくひくと痙攣している孔も、精液が零れた尻も太腿も全部ドロドロに蕩けていて。

力の入らない身体で少しでも離れようとすれば、すぐに捕まって無理矢理引きずり戻された。
そんな俺の反応に、彼はふ、と口角を上げて、トロトロになっている性器を慣れた手つきで巧みに扱いてきた。ほぼ同時、肚の中も数本の指でグチャグチャ撹拌し、摩擦される。


「あ゛ぅ…っうゔ、!ちょ、まっ、で…ッ、ぇえ、ぅゔ、ぅ、や゛、だぁあ゛…っ、ぃ、ぐッ、まりゃ、!も…、―っ、」


俺の制止の言葉なんて無視され、もがけば足首を掴む手に股を閉じることさえできずに肉壁を激しく摩擦され、歯を食いしばって堪えた。
顎が上がり、下腹部から全身に広がる快感に腰が跳ねた。

「――っ、ぐ、ぁ、」既に敏感になっていたそこは容易に絶頂し、指を食い締める。

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