12

俺が、解放される…?

蒼から、離れられる…?


「…もう二度と会わないから、安心して」

「待――っ、」


その言葉に、胸が締め付けられるような痛みとともに、小さく悲鳴じみた声があがった。
蒼の服を探り当てて、握りしめる。

嫌だ。そんなの嫌だ。

俺には、元々蒼に対して恋愛感情はなかった。

だからこそ、普通なら、友達に閉じ込められて犯されるなんて死ぬほど嫌なことで。

でも

自分が、こんなことされても、それでも嫌いになれなかった理由は
やっぱり、蒼のことが友達として好きだからで。
大好きだったからで。

いつか、昔みたいに戻れる日がくるって、信じてたから――。


「……っ」


今、気がついた。
いや、前から気がついていたんだと思う。

それは、蒼に閉じ込められるようになる前から、多分気づいてたけど気づかないふりをしてた。


周りにどれだけ言われても認めたくなくて、そんなことないって思ってた、けど。

いつの間にか、俺は蒼に依存してたんだ。
毎日そういう行為をされたって、…俺は本気で蒼を拒めなかった。

離れたくない。ずっと傍にいてほしい。一緒にいてほしい。

…蒼だけは、もう傍からいなくならないでほしいってずっと思ってた。

俺には、帰る場所がないから。
俺にこれ以上ないってほど、優しくしてくれたのは蒼だけだったから。
辛いときに、傍にいてくれたのは、蒼だけだったから。

だから、離れたくなんてない。

…捨てられたく、ない。


眼球が熱い。
視界が滲む。
嗚呼、泣きそうだ。

そんな感情でいっぱいになって、蒼を見上げると

彼は、少し困ったように眉を下げて優しく目を細めた。


「…ッ」


服を掴んでいた手を握られて、引き寄せられる。



「……それでも」

「…あお…っ」


その名を呼ぼうとした瞬間、



「…――好きだった。本当に、真冬のことが好きだった」



耳元で囁かれる低く掠れた声に、驚いて目を見開いた。


「……っ」


背中に回された腕に抱き締められて、息を呑む。

…凄く大切なものを、壊れそうなものを抱くように、
離したくないと、そう訴えるように。

思考がまったく働いていないのが、自分でもよくわかる。

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