9
「うおー!」「やろうやろう!」と盛り上がる皆についていけなくて、内心戸惑う。
(王様ゲームってなんだ…?)
聞いたことも見たこともない。
なんで皆知ってるんだろう。これって、鬼ごっこみたいな小さいころから皆よくやる遊びなのかな。
「ほら、真冬。引けよ」
椙原君まで、最初苗字呼びだったのにいつの間にか名前で呼んでいた。
いや、別にいいんだけど…、距離の詰め方が尋常じゃないくらい速いと思う。
「…………」
缶に割り箸が何本か入っていて、それをじっと見る。
(…引くって、この割り箸を選んで取ればいいのかな)
女子の何人かがすでに引いていたらしく、「ほら、一本選んで」とせかされて、今更やらないなんて言うわけにもいかずに少し悩んで引き抜いた。
「…(2番)」
下の方に小さく数字が書かれている。
この数字何に使うんだろうと不思議に思って首を傾げつつ、それを見ていると「あ、真冬くん2番だって!」と大きい声で、佐原さんが叫んだ。
「…へ?」
いきなりの大声にびくりと肩が震えて、見ると彼女は「えへ」と頬を緩めて笑う。
それに対して、「ほう、真冬君は2番かー」「こりゃあ、最初は決まったな」と、こそこそとした呟きが聞こえてきて呆然とする。
「…(なに…?)」
全く王様ゲームというものを理解していないせいで、皆の反応の意味が分からない。
誰か説明してくれと周りを見回しても、何かを企んでるように笑うだけで。
蒼くんに助けを求めるように視線を向けると、怖いくらいの無表情で彼はおれをじっと見つめて、やっぱり何も言わずに視線を逸らされる。
「…(うう…。泣きそう)」
蒼くんと喧嘩みたいなことしたことないから、余計につらい。
後でちゃんと事情を説明したら許してくれるかな…。
このまま永遠に無視され続けたら、どうしよう。
ひたすら落ち込んで肩をおとしていると、「じゃあ、決まり文句なー」と椙原君の声で、皆が一斉に叫ぶ。
「王様、だーれだ!!」
「………」
おうさま…?
疑問しか浮かんでこなくて、状況を見守っていると「あ、わたしだ!」と一人の女子が叫ぶ。
「ゆっちゃん、私の番号5番だから」
佐原さんが自分の番号を告げて、「おっけー」と確認しあっている。
やっていることの内容はわからないけど、こういう遊びはしたことがないから、何が始まるのかちょっとどきどきする。と、おうさま?の女子がにんまりと笑って声を張り上げた。
[back][TOP]栞を挟む