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すると、ふ、と吐息を零すような気配と、軽い布ずれの音がして、…首筋近くで呟く少し掠れた声が囁く。
「なんでもしてくれる?」
「う、うん」
その問いに一瞬戸惑って、でもおれにできることなら、と返す。
そうだ。
おれのせいで、しなくてもいいディープキスまでやらせたんだから、おれも多少は身体を張らないといけないだろう。
ここまでしてくれて、それですぐに許してもらえるだなんて、そんなの甘すぎる。
パシリでも、しばらく宿題を代わりにやれって言われても甘んじて受けようと思う。
…蒼のほうが頭いいから、そんなこと言わないだろうけど。
何か、しないといけない。
「…(でも、何をしろって言われるんだろう…)」
なかなかはっきりと何をしろって言われないせいで、怖くなってきた。
余程言いづらいことなんだろうか。
ぎゅっと腹に回って力の込められた腕にさらに力が入る。
「…俺が代わりにやったから、そのご褒美が欲しい」
「ごほうび?」
その何かをした代わりに親にねだる子供みたいな口調に、少しだけ驚いて目を瞬く。
掠れた甘えるような声に、ちょっと緊張して胸がどきどきする。
(さすがに、罰ゲームで言ってた全裸で登校とか言われたら嫌だな…)
いや、でも、もしそれでも…これは自分の罪だと受け入れて、……なんとか、頑張…ろう。
「……」
…さすがに、それだけは頑張れないかも、しれない。
すでに弱気になっていた。
でも、とりあえずその”ご褒美”の内容とやらを聞かないと始まらない。
「なにすればいい?」
ごくりと唾を飲みこんで、そう聞けば。
その問いに対する答えは、すぐに返ってきた。
「キス」
「………へ?」
たったの二文字の、でも予想もしない言葉。
短くて、その端的な言葉に、思わずそんな素っ頓狂な声が出る。
思ったよりその声が大きく感じて、ハッと口を手でおさえながら振り返って皆を見た。
(……よかった)
起きてないみたいだ。
こんな場面を見られでもしたら、絶対にやばい。これはさすがにやばい。
それよりも、
「…え、っと」
…聞き間違えた、かな。
さすがに、男相手にご褒美が”キス”なんて、しかも女子にモテる蒼がそんなこというなんて。
…ない、よな。
ないないと自己完結して、あははと乾いた笑いを零してみる。
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