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***


俊介の家は意外に近くて、

喫茶店から自転車で5分くらいの距離だった。


「しゅーすけにーちゃんおかえりー」


俊介が家の鍵を開けた瞬間、中から小さな男の子が飛び出してきた。
ぎゅっと俊介に飛びついて、「おーただいまー」と笑いあう俊介とその男の子の様子が微笑ましい。
俊介に少し顔つきが似ている。


「今日はにーちゃんのお友達が来てるぞ。柊真冬っていうんだ」

「おホモだちー?」

「…おい、誰からの入れ知恵だそれは」


キョトンとした表情を浮かべる男の子に、俊介の顔が途端に暗くなる。

それを見て笑いを零すと「笑うな」と怒られて、その顔がまた面白かったのでもっと笑ってしまった。

………男の子は「青木五郎」くんというらしい。可愛らしいというか、人懐っこそうな顔をしている。

「こんにちは」と頭を下げると「こんちわー。おれのにーちゃんとちがって、イケメンなにーちゃん」と元気な挨拶が返ってきた。

俊介は怒ってたけど、人に取り入る能力を持っているとはさすがのコミュ力だ。

こんな弟が欲しかったな、なんて羨ましく思っていると「ほら、上がれよ」と言われたので「お邪魔します」と言いながらスタスタと歩いていく俊介の跡をついていく。

たどり着いたのは、二つ窓、ベッド、勉強机、棚なんかがあってとても生活感のある部屋だった。
一人部屋らしい。


「わ、大きいな」


友達の家に来るのが初めてで「おお」と感動していると、俊介が「このゲームやろうぜ。面白いから」と誘ってくれる。


「そこだ!!殴れ!やれ!」

「………う、ぐ、」


俊介とゲームをした時間は、とても楽しくて、こんなに笑ったのはいつ以来だろうと思えるほど、居心地の良い時間だった。

――――――――――

コンコンとノックの音が聞こえた。
カチャリと扉の開く音。


「俊介ー、夜ご飯出来たわよー」


その声にハッとする。

(……時間忘れてた)

急いで時計を見ると、すでに19時を過ぎていた。
いつの間にこんなに時間がたってたんだろうと焦る。
そのくらい、ゲームに夢中になってしまった。

「やばっ、帰らないと」と鞄に荷物を入れていれば、「泊まってけばいいじゃん」と当たり前のようにそう言って笑う俊介に「え!」と驚いて声を上げる。
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