4

どうしようと困って、俊介のお母さんに顔を向けた。

「柊くんさえ良ければ、泊まっていってください」と優しく微笑んでくれるから、迷惑かけたら嫌だなと躊躇う。


結局「とまってけー」と抱き付いてきた五郎君の一言で、お願いしますと頭を下げることになった。


その後は、俊介のお母さんが作ってくれたオムライスを食べながら、皆で色々なことを話した。

皆で笑いながら食べるオムライスの味は何故かとても懐かしくて。

…こんな家庭にいられたら幸せだろうななんて考えていたら、……無意識に泣いていたらしい。

「大丈夫か」と言ってくれる俊介を安心させるように笑いながら首を振って、それでも止まらない涙に自分でも驚いていた。

「ご、ごめん」本当、こんなことでいきなり泣き出すなんて、頭のおかしい人間だと思われてしまう。

ご飯の最中なのに、俊介の家族にとても心配させてしまった。申し訳ない。


……でも、そんなあたたかい家族を、とても羨ましいと思った。

―――――――――


就寝時。


「…本当にそっちでいいのか?」


風呂に入らせてもらって、パジャマは俊介のものをかりた。
ちょっと大きいけど、それでも貸してもらえるだけありがたい。

俊介は自分のベッドをかしてくれると言ってくれたけど、慣れた敷き布団がいいと言えば、渋々ベッドに戻った。

「じゃ、消すぞ」と言う声とともにぱちりと電気が消されて、部屋が真っ暗になる。


「……」


枕をぎゅっと抱きしめながら、ひたすら暗闇の中に見える棚を見つめ続ける。

……誰かと一緒の部屋で寝るのって、中学三年の修学旅行以来だ。

(…蒼は今、何してるのかな)

寝てるよな、多分。

1時を過ぎた時計の針を見て、ふっと息を吐く。
あの時一緒にいてくれた蒼が、今はいない。


「……」


ふいに、そのことを実感して胸が締め付けられるような寂しさに駆られた。

たまに道路から聞こえる車の音と、部屋の中で鳴る小さな秒針の動く音。

静かだ。



「…(今、)」


俊介に声、かけていいかな。

もう、寝ちゃったかな。

悩みながら、枕をぎゅっと抱きしめていると俊介の声が聞こえる。


「何?眠れないのか?」

「う、うん」


もぞもぞしてたせいでおこしてしまったらしい。

申し訳ないと心苦しくなりながら、「あ、あの」と声をかけて緊張する。

俊介なら、いいっていってくれるかも。

でも友達にこんなこと頼むのって…どうなんだろう。嫌がられたらどうしよう。
”好き”って一度言ってくれただけに、今日”嫌い”になられたくない。


「…なにー?」


眠そうにくわっと欠伸をする俊介に、勇気を出して、息を吸った。


「………一緒の布団で、寝てもいい?」
prev next


[back][TOP]栞を挟む