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次の日、朝からふわふわ家族に癒されながら、朝ごはんを御馳走になった。

(…あたたかいご飯ってやっぱりいいな)

俊介と一緒に家を出ると「行ってらっしゃいふたりとも」と言ってくれて、「行ってきます」と手を振った。

こんな言葉を自分が口にする日が来るなんて、夢みたいだ。

…と、そんなことを考える自分が面白くてぎこちなく笑っていると、俊介のお母さんが「また来てね」と言ってくれた。…温かい家族ってこんな感じなんだなって思うと、いいなって思うのと同時に少しだけ寂しくなった。

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「おー、お前らおっはよー」


俊介の大きな声とともに開かれる教室のドア。


「おっ、俊介ーはよっす」

「あれ、真冬も一緒じゃん。珍しい」


教室に入った瞬間に男子生徒が集まってきて、その賑やかぶりに驚いた。


「ふふん。俺と真冬はな、昨日……」


深刻な顔で話し出す俊介に、皆がその雰囲気につられるようにごくりと唾を飲みこんだ音がする。
なんでそんなに勿体ぶった話し方をするんだと苦笑しながら席まで歩いて鞄から教科書を取り出した。


「なんと…」

「”なんと”なんだよ…!!」

「まさか、俊介と真冬が…?!」


なんと、まで言って長い一息をつく俊介に皆が口々に勝手な解釈をし始める。
結婚したとか、実は童貞じゃないとか、二股疑惑とか、大人の階段をのぼったとか。

(…皆、本当にノリいいな…)

感心半分呆れ半分でその状況を見守っていると、俊介が息を大きく吸い込んだ。



「俺と真冬は、昨日ついにゲームをしたり、お泊りをしたりする仲になりましたーー!!」


その一声に、男子群がわあっと歓声を上げる。
じゃじゃーんなんて効果音でもつきそうなほどの演出力。見事だ。

本当にノリが良くて、びっくりする。

逆に煩すぎて耳が痛い。
…なんでこんなことで盛り上がれるんだろうとはちょっと思う。
でも、見てて面白いから全然良い。
むしろ羨ましかったりする。


「おう!よかったな」

「ああ、お前らの距離が縮まったのが嬉しくて…っ、嬉しくて俺はもう…っ」

「絶対俊介は柊にこっぴどく振られると思ったのに…!!キイィ」


純粋に俊介の肩を叩いている人もいれば、感激して泣きまねをする人もいる。
バリエーションが多くて、そのそれぞれの反応が余計に面白かった。
それぞれがぞれぞれの感想を述べたところで、「あっ、りんごティ―が来たぞ」という誰かの声のすぐ後、先生が来てホームルームが始まったのでその話は打ち切られたのであった。


………

………………


昼放課になって、「ちょっと蒼のところに行ってくる」と俊介に伝えれば、またかとむっと眉を寄せられて、苦笑いする。


「昨日のこと謝ってくるだけだって」

「わかった。早く帰ってこないと真冬の弁当食っちまうからな」


本当にそれだけだから、と続けると、笑いながら送り出してくれたので少しほっとして廊下に出た。
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