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ああもう無理難題な要求じゃなきゃいいなと考えながら、蒼を見上げる。
「で、できることなら、します」
うう何言われるんだろうと怯えていると、彼は笑って頷いた。
いつも通りのその笑顔に少し安心する。
「そんな顔しないで。簡単なことだから」
「……何をすればいい?」
ごくりと唾を飲みこむと、真剣な瞳がこっちを見て、口を開く。
「…――俺以外を、目に映さないで」
その真剣な声音と言葉に、ぴたりと身体が固まって。
「…え?」と驚いて思わず声を上げる。
すると彼は「…って言いたいところだけど、そんなこと命令すればまーくんが困るから言わない」と小さく続けて、でもその表情が冗談を言っているように見えない。
……これが本気だったなら、目でも抉らないとそんなこと実現不可能だ。
言わないとか言いながら、すでにもう口から出て言葉として俺に伝わってるんだけど、と戸惑う。
「それで、本当の要求は?」
「……俺以外のやつを好きって言わないでほしい」
視線を逸らし、何故か辛そうな表情をしてそんなことを言う。
呆気に取られる。
(”好きって言わないでほしい”…?)
思わず口から疑問の声が漏れる。
「なんで?」
「……痛いから」
心臓の辺りをおさえて、その整った顔をひどく苦しそうに歪めた。
慌てて「え…っ、だ、だいじょうぶか?」と問えば「…約束してくれたら良くなるかもしれない」と何故それが蒼の体調に関係あるのかわからないけど、冗談を言っているような表情ではなかった。
ただでさえ透明感のある美白というか…色素が薄いのに、今は倒れてしまうかと思うほど真っ青を通り越して血の気が引いているように見える。
少しでも支えられるようにその身体に触れて、頷く。
「わかった。言わない、ように気を付ける」
「……」
「…い、言わない」
気を付ける、と言えば、納得する返答ではなかったらしい。
言い直せば満足そうに僅かに微笑み、優しく抱擁された。
そもそも誰かに好きって言う言葉自体、滅多に言うものでもない。
このくらいなら、気を付けなくても守れる。
―――――――
そう、思ってた。
蒼との「ヤクソク」が増えていく。
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