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その夜、電話があった。
風呂上がりで、濡れた髪の毛をタオルで拭きながら、通話ボタンを押す。
もうすぐ夏なだけあって、火照った身体に加えて暖かい部屋は湿度が高く、冷房をかけないと汗をかいてしまいそうだ。
「もしもし」
『真冬?』
「うん、そうだけど」
その声に頷いて答えると、通話の相手はほっとしたように息を吐く。
なんだろう…と自分でつくったうさぎリンゴをしゃりと口に入れながら、耳を澄ませる。
『明日の帰り、ちょっと話があるんだけど時間作れるか?』
「…う、ん。なんとかする」
頷きつつ、内心恐怖におびえていた。
……蒼に、なんて言おう。
俺と俊介が仲良かったり、一緒にいると怒るから、あんまりこれ以上不機嫌にさせたくない…けど。
そんなこと考えてたら、俊介と会話すらできなくなってしまう。
「…(なんで嫌がるんだろう)」
俊介は人柄が良いから、蒼も話してみれば絶対に好きになると思うけどな。
……あの日も、俊介と出かけるってちゃんと伝えたのに。
俊介の家に泊まった頃から、蒼は俺と俊介が一緒にいると今までよりさらに不機嫌になるから、その度にびくびくしてしまう。
(…と、とりあえずなんとかしよう)
俊介からの話を無視するわけにもいかない。
それに、…蒼だって。
(蒼だって明日は友達と遊びに行くって、…言ってた)
この前聞いた昼放課の記憶が蘇って、むっと眉が寄る。
俺だけこんなにびくつくのも変な話だ。
別に蒼とは、俊介と会わないなんて約束はしてない。
「なんとかする」
その言葉を嘘にしないように、ちゃんと蒼に今からメールしとこう。
『あのさ』
歯切れの悪い言葉に、「ん?」と首を傾げた。
『一之瀬は、絶対に連れてこないでほしい』
「え、なんで?」
改めて強めの口調で言われて驚いた。
携帯から、声が聞こえる。
『だって、』
次に言われた言葉に、目を瞬いた。
『これは、一之瀬に関する話だから』
―――――
その声は、酷く真剣で。
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