6

とりあえず、帰りになるまでに蒼に会いに行かないといけない。
あんな終わり方で、俊介と普通に放課後会うことなんてできない。

そう思ったので昼放課に一緒にご飯を食べよう、と。


…蒼の教室を訪れて、かれこれ10分。


(お、お腹空いたし…昼放課が終わってしまう…)


教室にはいなくて、聞いても誰も居場所を知らないようだった。
本当にどこに行ったんだろう。


「…もう、戻ろう…」


やっぱり俊介たちと一緒に食べよう、と後ろを向いた瞬間、
誰かにぶつかってしまった。


「わっ、!す、すみません」


最早考えるより反射的に謝りつつ、予想しない衝撃に弁当が床に落ちる。
幸いゴムでとめてあったから中身が零れなかった。よかった。

ほっと息を吐いてそれを拾い上げると、「…まーくん?」と、呟く声が聞こえた。

ずっと待ち望んでいた声に、やっと会えたと安堵で頬が緩む。

顔を上げて、その名を呼ぼうとして。
蒼の隣に知らない男子がいるのを見て、固まる。

その男子が、何故か俺を目に映した瞬間に目を鋭く細めた。


う、


「…(な、なんで睨み付けられたんだろう…)」


ダメな時に声をかけてしまった気がする。

耐えきれなくて顔を俯かせても、まだこっちを見る目は逸れてない気がした。
何故かわからないけど、絶対に好意でない方の熱い視線に息が苦しくなる。


「まーくん、」


名前を呼ぶ声に反応して、恐る恐る顔を上げる。


「もしかして俺に会いに来てくれた?」


目が合った瞬間、蒼はふわりと表情をやわらかくした。
いつものように優しい微笑み。

……ああよかった。いつもの蒼だ。

こくこくと頷いて、「い、一緒に昼ご飯、」食べようと思って、そう続けようとすると、隣の男子が「えっ」と声を上げる。

その大きな声にびくりと肩を震わせる。彼はじっと俺を睨み付けてきた。


「いや、蒼様は僕と食べるから」

「…(”様”?)」


一瞬その聞きなれない呼び方にぽかんとして、「え?」と呆けた声が漏れる。

…相変わらず、俺に憎しみすら抱いているのかと思う顔で見てくる。
なんで初対面なのに睨み付けられるとかはわからないけど。

でも


(…そっか。約束してるんだ)


タイミング悪かったな。

もっと早く蒼に言っておけばよかった。
落ち込んで、慌てて謝ろうと口を開いた瞬間、
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