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俊介が、俺達の関係を”異常”だと。
そう言ったから、俺は前よりもさらに自分と蒼の関係について考えるようになったのではなかったか。
おかしいと、言われてから初めて、真剣に考えるようになったのではなかったか。

それに気づいて、呆然としていると
蒼が俯いて、「やっぱり、そうなんだ」と言葉を零す。
肩から手が離れて、よろけたその身体が、後ろの机に当たって音をたてた。


「本当に、…最初から、消しておけばよかった。あんなやつ」


心底吐き捨てるように呟く。
そして、片手を顔にあてて、「あーあ」と嘆くような声を漏らした。
その言葉にびくりと俺が震えると、蒼が嘲るような笑みを浮かべる。

初めて見たその表情を見て、鼓動が速まった。

蒼もこんな顔をするのだと、俺にはまだ知らない蒼の顔があるのだと、怖くなる。
どくん、嫌な音が鳴った。


「まーくんは最近いつも『俊介』、『俊介』って、毎日そいつの話ばっかりで、」

「…っ」


その、自嘲気味な、でも嘲るような笑みを浮かべてまま近づいてくる蒼が怖くて、自然と身体が後ろに下がった。
でも、座ったままの状態だから、すぐに後ろの壁に身体が当たって。
ほとんど動いていないに等しい。


「俺が嫌だって言っても、俊介がいうからそうした方がいいんだって…そればっかり」

「……ごめん」


目の前に立つ蒼を見ることができなくて、俯く。

確かに俺は自分の気持ちにばかり目がいって、蒼のことを何も考えていなかったんだと改めて思う。

蒼もその後何も言ってこなかったから、受け入れてくれたんだと思ってた。
椅子の向きに対して横向きに、通路に向かって座っている俺の前を塞ぐように、蒼の手が後ろの壁に触れる。
びくりと震えた。


「俺よりあいつのほうが好きなの?俺の方が、まーくんのこと大切に思って、ずっとまーくんのことを考えて生きてきて、それだけが俺の生きる希望で、そうやってずっと生きてきたのに、……まーくんは俺より、あいつのほうがいいんだ。」

「…っ、ちがう…っ、蒼…っ」


呆然として、並べられる言葉を聞いて、でも最後の一言に首を振って否定した。
でも、それが聞こえていないように、彼は言葉を紡いでいく。


「ずっと一緒にいて、俺の方があいつよりまーくんのことを知ってて、あいつより俺の方がまーくんの近くにいたのに。…まーくんは、俺よりあいつの方が信頼できるって言うんだ?まーくんは、俺より」


今にも泣き出しそうに眉を寄せながら、その薄い唇が微かに上擦った震える声で呟く。


「………あいつを、選ぶんだ」

「――っ」


頬に冷たい手が触れた。

張りつめたような空気の中、目が、…合う。

何かを堪えるように悲痛な表情をしている蒼が瞼を軽く伏せる。
身を屈め、吐息が触れるほど寄せられる整った顔に、身動きができない。

「…っ、ぁ、」動かないと、避けないと、と思っている間にも、柔らかい感触が押し付けられて


―――唇を、奪われた。


「…っ、ん、ぅ…っ、」


身を引くと、こつ、壁に後頭部があたった。

逃げることもできずに、ぎゅっと拒むように口を閉じていれば、抵抗しようとする俺の唇に吸い付き食むようにされて、勝手に鼻にかかったような息が漏れる。
堪らず、息を吸おうとした瞬間に捩じ込んだ舌で口内を舐めまわされる。


「…っぁふ…っ、やッ、ん…っ、んん…っ」


手で押し返そうとしても、がっちりと背中に回されている腕に身動きが取れなくされている。
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