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決して激しいわけではないのに、腰が砕けそうなほど濃厚に甘ったるい舌使いに思考がもっていかれそうになる。
擦れ合う舌は次第に痺れて、その痺れるような感覚が全身に伝わっていって力が抜けてくる。

なんで、と思うほど呆気なく身体の奥が疼き始め、震えた。
お互いの口の間で舌が行き来し、唾液が口の端から零れる。
生理的に滲んできた涙で視界が歪む。


「…やめ…ッ、…ん゛ん…っ、」


口を開こうとするたびに塞がれて、抵抗の声を掻き消される。

思考を全部持っていかれそうなキスに意識を奪われていると、何かが服越しに腹の辺りに触れて、だんだん身体のラインに沿って下に降りてきていることに気づく。
その手が太腿をなぞり、柔らかく揉まれ、その感覚に更に頬が熱を上げ、ゾクっとする。

下にたどり着いた蒼の指が、巧みなキスによって勃起して膨らみかけている服の上をその形に沿って撫でる。


「――っ、!!ふぁ…ッや…んぅッ、」

「…毎回俺とキスするとき勃ってる気がするんだけど、意外と無理矢理されるの好きなんじゃない?」

「……っ、ちが、おれは…っ、んん゛…っ」


冷え切った暗い目を伏せ、また唇を押し付けてくる。

手で存分にその膨らみを撫でた後、上にある金具を探り当てた。
ズボンのチャックをジーッと下げる音がする。

その、教室で聞こえてはいけないはずの音に血の気が引く。

(やだ…っ、やだ…っ)

こみ上げてくるそんな感情に従って、急いで脚を閉じようとした。

でも、いつの間にか両太腿の間に差し込まれている膝のせいでそれが出来ない。
座っている俺が蒼にそうされると、本気で逃げ場がなくなってしまう。

動けば動くほど蒼の膝に股間が擦れて余計に身体が熱くなった。

舌を絡めてしゃぶられている間に、ゆっくりと手が下着の中に入ってくる。
冷たい感触…自分のものじゃない、他人の手の感触が、肌を伝って降りていく。


(――いやだ。嫌だ嫌だ嫌だ…っ、)


恐怖で声を上げようとしても唇を塞がれて、全て慣れたキスに飲みこまれて、音にならない。
蒼からなんとかして離れようと上げた手を掴まれて、指と指を絡められて恋人繋ぎみたいにして壁に押さえつけられる。


(……――こんなつなぎ方じゃ力も入らないし、拳も握れないから何も抵抗できない)


やだ。いやだ。

下着をずらされ、モノが外に出る。
すらっとした長い指がそこに触れ、手が俺の硬くなったソレにたどり着いた瞬間、直に握りこまれる。


「――ッ、んん゛…っ、?!」


慣れた手つきで竿の皮を上下に扱かれて、じわ、と頬が熱を帯びる。
くちゅ、クチュ、と舌の粘膜を嬲られながら、手の平や指の腹で亀頭を優しく撫でられたり摩擦されたりして、身震いする。

キスのせいだけじゃなく乱れる呼吸に、下腹部の奥から込み上げてくるむずむずした感覚に僅かに腰をくねらせた。

最初は擦られる痛みがあったのに、すぐにその痛みも消えて快感になって瞬く間に硬くなっていく。

先走りを零しながらぬるぬると濡れて、ぬめりの絡んだ手によって滑りよく刺激されて、淫音を出し始めた性器からグチャグチャと卑猥な音が聞こえてくる。
こんな状況なのに気持ちいいと思ってしまう。
手の動き方さえ変えて工夫しながら扱かれすぎて、腰がびくびく震えて跳ね、奥から突き上げてくるような気持ち良さに呻き、絡み合う唾液の量が増えた。



「…ん゛ぅ…っ、ふぁ…っ、」

「そんな下手なキスじゃ、俊介どころかどんな女も満足してくれないよ」

「…っ、んん…っ、」

「どうせ、無理矢理されてこんなに濡らしてるまーくんに恋人なんて一生できないだろうけど」


吐息を零して笑う冷たい声に、耳が熱くなる。
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