12

***

帰り道、二人で歩く。

もう冬が間近だからか、17時にはもう外が暗くなってしまっている。

辺りが明かりを消した部屋のような暗さで、今まで一人で帰るときは寂しくてずっとイヤホンで音楽を聞いていたから、誰かと一緒にいられることで怯えなくていいので安堵する。


「もう一度まーくんと一緒に帰ることができるなんて、思わなかった」


蒼がすごく嬉しそうな表情で顔を綻ばせて、俺もそれにつられて自然と笑った。
そんな顔をされると、こっちまで恥ずかしくなって、でも嬉しくなってしまう。

全部、忘れたわけじゃない。記憶に残っているあの痛みと蒼の表情を思い出して、怖くて震えそうになるけど、それでも一緒にいたいと自分が言ったのだから、どうせ一緒にいるなら全部なかったことにして、忘れよう。

そして、前のように蒼と一緒にいるんだ。

この蒼の笑顔だって、俺があの時縋っていなければ見られなかったのだと思うと、なんだか儚いもののように感じて少し胸が苦しくなった。


「最近、本当に暗くなったよな。この時間帯」


曇り空を見上げながら、ふとそう言葉を零すと蒼は一度空に視線を向けて、それから俺に視線を移す。


「まーくんは暗いの、嫌い?」

「……あんまり、好きじゃない」


周りが暗いと、自分の心が重くなって寂しい感じが増幅される気がする。

俯いて、そう言葉を零せば蒼が「手でも繋ぐ?」と微笑んだ。

…正直言えば、一瞬それもいいなって思ったりしてしまった。


でも流石に高校生同士で手を繋ぐのは変だろうし、むしろそれをしたいって言ってしまうと自分が子どもで、怖がりみたいで恥ずかしくなりそうだからやめようと首を横に振る。

あー、なんでこうやって体裁とかプライドとか気にしちゃうんだろう俺…、と若干自己嫌悪に陥る。


「まーくん」

「ん?何?」


その呼びかけに首を傾げると、その顔がふ、と微笑む。
それはとても穏やかで、優しい表情だった。


「まだ、俺の家に来たいと思ってる?」


その唐突な言葉に目を瞬く。
勿論、良いというなら行ってみたい。

でも、以前に実際に、お見舞いで家に行った時にすごい怖い顔で怒られて。
それから今までずっと「絶対にもう二度と家に来るな」の一点張りだった。

だから、無理だと諦めていたのに。

いきなりどうして、と驚きに目を見開くと、彼は苦笑して笑みを零した。


「…もう、良くなったんだ。まーくんが来ても」


”今までのお詫びもしたいから。”

そう言って微笑む蒼の言葉に、「もう良くなった」ってどういう意味だろうと違和感を感じながらも、でも、それよりも初めての蒼からの誘いに嬉しくて胸がどきどきする。

蒼の家ということは、つまり、あの大きなお屋敷の中を見ることができるんだ。

どんな感じなんだろう。

想像もできないぐらい邸を囲む屋敷の塀が長そうだったから、敷地内に池があって、そこに竹の筒がカタンって鳴るやつもあるのかも。
漫画の中でしか見たことないから尚更、実際にああいう大きな家の中を見てみたい。
外から見ても大きいんだから中もきっとすごいんだろうな。


「行ってみたい…!!」


そう言って笑うと、彼は「うん。おいで」と柔らかく微笑んで俺の頭を撫でた。
prev next


[back][TOP]栞を挟む