14

***

そして、就寝時。


「まーくん、一緒に寝よう」

「…う、うん」


元々布団は一つしか用意されていなかったから選択権なんてないんだけど、当たり前のようにひとつしかないことにちょっとびっくりした。
布団にもぐりこむと、背中に腕を回してぎゅっと引き寄せられる。


「…やっぱり、俺が怖い?」


抱き寄せられた瞬間に、少しだけ無意識に身体が硬くなってしまったのがばれてしまった。
息を吐いて、身体の緊張を少しでも緩める。


「…ちょっと」


ここで否定しても意味ないだろうと思って、素直に頷いた。
確かに、怖い。
怖いと身体は思ってる。


でも。

ぎゅっと蒼の浴衣を掴んで、顔を上げた。


「…今は、怖くない」

「無理しなくてもいいよ」


俺と目が合うと、彼は困ったように笑った。
…本当に今は怖いと思ってないのに。


「あの時だって頭の中がぐちゃぐちゃになってわけがわからなくなって、嫌いだって言って、何でこんなことしてるんだろうって思ったくせに、結局無理矢理ヤって、……まーくんを傷つけた」


後頭部に添えられた手によって、彼の胸元に押し付けられる。

ふいに俊介の言っていたことを思い出した。
蒼の俺への感情は、愛情でも友情でもないと。


…そもそも、好きって、どんな感情なんだろう。


それさえも俺には、わからない。
蒼のことも、俊介のことも好きだと思う。
でも、それは多分友達への好きなんだと思っているけど、俊介は俺にも自分の気持ちに気づいてないと言った。

…ということは、その友達への好きという感情すらも俺の思い違いだったりするのかな。

それに、友達的な意味の”好き”と恋愛的な意味の”好き”では何が違うんだろう。

友達に対する好きでも、恋愛感情での好きでも好意的な感情は同じなのに、決定的に何かちがうものがあるのだろうか。どこが異なるのか、考えてみてもわからない。


蒼と俺のこともそうだ。

…俺達は、男同士だから。
余計に友達とか、恋愛とか、その境目がぐちゃぐちゃになって、相手に対する感情がよくわからなくなってしまうこともあるのかもしれないと、ふと思った。

押しつけられた場所から、肌を通して心臓の鼓動が聞こえてくる。


「…ずっと痛かった…」


頭上でぽつりと声がする。


「…まーくんに俺のしらないところでなにかあったり、まーくんが俺から離れようとすると、心臓が壊れそうになる…」


その声が、身体が震えていて。
顔を上げようとすれば、隠すように強く抱き締められる。


「…だから俺は、まーくんがいないと、だめなんだ……」


その言葉に目を瞬く。
俺に、そこまで蒼に言わせるほどの何かがあるとは思えないのに。


どうして。

……でも、こんなふうに言われたら俺にできることは一つしかない。

どうにかして安心させたくて…微かに震える背中に腕を回した。


「…俺は、ここにいるから」


どうして、蒼はこんなに俺に執着するのだろう。
彼の身体を抱きしめながら、静かに目を閉じた。
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