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家まで送ってもらって、その後支度をして出かける。
着替えるのが面倒だったので、制服のままだ。
ジャンバーを上に羽織る。
「さむ…っ」
家を出た瞬間に、冷気が顔を覆ってぶるりと身体が震えた。
陽が落ちているから、暗い。
(…庭を見せてくれたお礼に、蒼に似合いそうなネックレスをあげたい…)
多分蒼なら、受け取ってくれる…と思う。
なんでネックレスなのかっていうと、…俺が初めて誰かから物を貰ってすごく嬉しくて、ずっと大切にしているものがそれだから。
大切に思う人には、自分が貰って嬉しかったものをあげたい。
近くのアクセサリーショップに入る。
初めてですごく緊張したけど、なんとか購入できた。
あの容姿ならどんなアクセサリーでもお洒落に見えそうだけど、散々悩んだ末、蒼に一番似合いそうな上品で綺麗なネックレスを選んだ。
「…(…喜んでくれるかな)」
…喜んでくれたら、いいな。
蒼の反応が楽しみで、思わず頬が緩む。
気分が上々しているのを感じながら、箱の入った袋をぎゅっと握った。
「………」
また、だ。
そんな既視感に襲われた。
さっきから足音が、ずっと後ろから追ってきているような気がする。
この前、学校が終わってから一人で夜買い物に行った時も、誰かにつけられているのを感じた。
それから、何回か同じようなことがあった。
今度のは、ショップを出た後からずっと同じ速度でついてきていて。
…今までは、もしかしたら近所の人なのかもしれないと思って、必死に気にしないようにして、いつも通り普通に歩くようにしていたけど。
でも、流石におかしい気がする。
「…(ショップからこんな大通りから外れた道までずっと一緒で、かつ近くの人なんてことがあるのかな)」
以前に、板元君が後ろを歩いていた時とは全然恐怖感が違う。
あの時は学校の中で、しかも昼間で、同じ建物内に沢山の人がいた。
…でも、今はもう冬の19時近くて、周りは真っ暗だ。
あるのは電灯の明かりだけで、それがない位置にすこしでも入ってしまえばほとんど周りなんてよく見えなくなる。
(…な、なんで最近…)
こんなことばっかりなんだと、若干泣きそうになりながら早足で早く家につかないかななんて考えてぐ、と唇を噛む。
…俺なんかを追ったって、何も面白いことなんてないのに。
誰かに助けを求めたくなるけど、俺は男なんだから一人で解決しないといけないと思うし、誰かに心配させたり、迷惑かけたりしたくない。
目をぎゅっと瞑って、全速力で家まで走った。
「…っ、」
――ついて、くる。
俺を追う足の音と、そのせいで呼吸の荒くなった音。
心臓がばくばくと嫌な音を立てる。
やばい、絶対にやばいって。
急いで鍵を開け、中に入って、すぐにロックとチェーンをかける。
「…っは…っ、はぁ…ッ、」
見慣れた自分の部屋に、安堵してふーっと息を吐いた。
しばらく息を整えて、覗き穴から外を見ても、もう誰もいなかった。
…これからは、なるべく土日に買い物に行くようにしよう。
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