13


***


「おはよう。俊介」

「おう、真冬。おはよー」


俊介に対して、一応告白(?)を断った日からちょっと気まずかったけど、それでも少しずつ慣れてきて。
相変わらず明るくて優しい俊介を見て、やっぱり友達でいて良かったと思った。


「あ、柊君。今日、蒼様に頭撫でられてたでしょ。いいなー。僕も撫でて撫でてー」


板本君は毎日話しかけに来てくれて、それだけ人懐っこい子なんだなと感心した。
俺は仲良くなっても、しばらく自分からは話しかけられない。

…というか、話しかけたとしても、万が一でも冷たい対応をされたらずっと落ち込んでしまうだろう。それが怖くて話しかけられないのに、板本君はすごいな。

いつ見ていたのか、頭なでなでが羨ましかったらしく小動物っぽく笑って頭を差し出してきたので、よしよしと撫でると彼は嬉しそうに頬を緩めた。

……こんな風に板本君と仲良くなるなんて、以前は考えもしなかったな。

嬉しい。
蒼とも俊介ともすごく仲良くできてるし、こうやって板本君とも友達になれたし、最近いいことばっかりだ。

そうして、蒼のネックレスの効果もあってか、そんな楽しい幸せな日々が続いて。
あの誰かが追ってくる気配も消えていて、もう大丈夫だろうと。

多分俺は完全に油断していた。


―――――――


ガチャリと重いドアを押して、家から出る。


「…うう…ッ、さぶ…っ、」



凍えるような冷たい風が顔に吹き付けてきた。
朝の6時だからか、太陽が昇っていないせいでまだ薄暗い。
ホームルームは8時半からで、いつも俺が家を出る時間は7時過ぎだ。

だけど、この時間に出たのには理由がある。

蒼を、迎えに行くためだった。

毎朝、蒼は俺と蒼の家は近いっていうわけでもないのに、迎えに来てくれるから。
俺だって、来てもらってばかりは気が引ける。
だから多分もうちょっと遅くに家を出てもいいんだろうけど、もし入れ違いになったりしたら大変だろうと思って、蒼には内緒で早めに家を出ることにしたのだ。

家の場所は、前に二回行ったから大体把握している。


「あー、暗いのやだな…」


心寂しくて呟けば、白い息が吐き出される。
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