20
***
昼ご飯中。
「真冬、顔色悪いけど大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫」
ああもう、俊介にまで心配させてしまった。
今までは知らなかったから普通に生活できていたけれど、もしかしたら自分が今もどこかで見られているんじゃないかと思うと気が気でなかった。
うろ覚えだけど…あの男の人、確か、「この学校にお金で雇った子がいる」って言ってたし…、
「…っ、」
びくびくと怖くなりながら周りを見回してみても、誰の視線も感じなかった。
…今は、昼放課中だしこんな人目のある場所で見られてるわけない…か。
気を張り過ぎだったかもしれない。
そう考えて、ふ、と安心して息を吐いた。
「何か悩みでもあるのか?」
「ありがとう。でも、自分でやらないといけないことだから」
笑ってそう返しながら、もう逃げるのはやめようと思った。
深くは聞かないでくれて俊介は「おう」と爽やかに笑った。
「そっか。頑張れよ」と頭をぽんぽんと軽く叩かれて、うんと頷きながら気合を入れる。
今、決めた。
これからも、ずっとこんなに怯えるのは嫌だ。
……だから、俺から探しに行こう。
全部の教室に行けば、少しくらい反応をみせるとか、怪しい人がいるかもしれない。
…何もしないよりは、全然良いはずだ。
うん、と頷く。
帰りだと、蒼にきっと何をしてるか心配されるだろうから今から行くことにした。
昼ご飯の最中なら結構時間あるし、見に行くくらい俺でもできる。
「…(いない…)」
一応蒼に探してるところを見つかったらやばいので、蒼のクラスは一番最後にしようと他のクラスを全部回ったけど、全然わからない。
…もしかして、あの人が嘘ついたのかな。
それでも、もし本当にいたらどうしよう、と怖くて少し鼓動がはやくなるのを感じながら、こっそりと教室の中をのぞき込む。
前の方から見ていく。
ボロを出せーと念じながらじーっと目を凝らしてみても、びくっとしたり、こっちを見て変な顔をする人はいなくて、
「…(あれ…?)」
怪しい感じの人だけじゃなくて、蒼もいなかった。
何故かぽっかりと空いている空間を不思議に感じてどこかに行ってるのかななんて首を傾げて、いつも蒼を呼んでくれる人に尋ねてみる。
「蒼がどこに行ったか知ってる?」
俺の問いに、その子はきょとんとした顔をした。
「蒼君?蒼君なら学校に来てないけど?」
「来てないよね?」と隣の子に確認して、その子が頷くのを見て、呆気に取られた。
「…え?」
蒼が、学校に来てない?
そんなわけがない…はずだ。
蒼が欠席してるはずがない。
(……だって、俺と一緒に学校に来たんだから。)
わかれてから、確かにクラスの方向に向かうのを見た。
「あれ、柊君だ」
わーいと微笑みながら、ぎゅっと抱きしめてくる板本君に「おはよう」と笑みを浮かべる。
「僕、蒼様なら見たよー?」
「どこに行ったかわかる?」
「うーん。わかんない。でも朝見かけた時は、なんだかすごく怖い表情をしてて、携帯で何か話しながらどっかに行っちゃった」
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