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俺の手をとって、指を絡めてくる。
「早く帰ろうとしてたのに、なんかすごい足止めされた」
『……穢れた醜い顔がまーくんの名前を口にするなんて反吐が出る』と吐き捨てる蒼に、頷き返せるはずもなく、ただ手の震えがとまらない。
もしかして、俊介は心配してくれたのだろうか。
俺が今どうしているのか、
蒼に聞こうとしてくれたのだろうか。
(……でも、その俊介に、蒼はなにをした?)
口から発する声が震えているのを感じる。
「…こ、壊したって…」
「これでまーくんもあいつから解放されるな」
さらりとそう言って笑う蒼に、くらりと視界がぼやける。
…解放って、何。
聞いたら絶対に蒼の機嫌を損ねるだろうと分かっていながら、どうしても聞かずにはいられなかった。
「しゅんすけは、今どこに…っ」
「知らない」
その言葉に焦って、とりあえずじっとしていられなくて立ち上がろうとする。
…と、
鎖を強く引っ張られてバランスを崩した。
床に押さえつけられて怖いくらい無表情に見下ろしてくる蒼に、手足から血の気が引いていくような心地になる。
「…どこにいくんだよ」
「どこって、そんなの――っ」
決まってるだろ、そう言おうとした瞬間、
抱き寄せられた。瞼を軽く伏せて顔を近づけてきた蒼に、呼吸もできないくらい長くキスされる。
「――っ、は…っ」
酸素を求めて、息継ぎをしようと口を開けばそれさえも狙ったように、甘く蕩けさせるような舌使いに翻弄されて。
全神経が口の中に集中しているのかと思う程、舌から広がる感覚に全身が溶けちゃうんじゃないかと思うぐらい執拗に嬲られる。
さっき俺が考えたことを消そうとするかのように、
……蒼以外の他の誰かを気にする、その悪い思考をしかりつけ、奪い取ろうとするように愛撫される。
酸素が足りなくて死ぬかもしれない。
そう思った瞬間、唇が離される。
一気に入ってきた空気に、噎せてげほげほと咳き込んだ。
視界がぼやける。
「――俺がいなかったら、息もできなければいいのに」
無表情にそう呟く彼に戦慄した。
その顔が決して冗談を言ってる顔じゃなくて。
怯える俺を見て、ふ、と表情を和らげた蒼に、きつく抱きしめられた。
首筋をすっとなぞるように触れられて、「追いかけるなら、止めないけど、…」笑顔でそう耳元で囁く彼を、信じられないような思いで見つめる。
「その綺麗な首に、もう一つアクセサリーが増えてもいいならな」
うっとりとした表情で俺の首に口づける蒼に、もういっそのこと何も考えられなくなりたかった。
―――――――
壊れてしまいたい。
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