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全員の目がにやにやと楽しそうな笑みを浮かべながらこっちを向いているのを見て、背筋を冷たいものが流れたような気がした。


「はは、俺らはお前に個人的な用事があるんだよ。柊真冬クン」

「…っ、なんで、俺の名前…、」

「別にそいつに聞いたわけじゃないぜ。俺達は前からお前を知ってた」


…その言葉に、ようやくこの状況を把握する。
ただ、偶然、俺が呼び出されたわけじゃなかったんだ。

人違いじゃないかと言いたいところだけど、俺を見てその正しい名前を口にしたということは…間違いじゃない可能性が高い。

…殴られてぼろぼろになった板本君に目を向ける。
痛々しいその姿から、目を背けたくなる。


「…俺が、何かしたなら、ここに来たから充分でしょう。板本くんは解放してくれませんか」


怖い。話す声が震える。
身体が、震えてしまう。

こんな風に馬乗りにされて、服を破られて、それにこれからのことを想像するだけで恐怖でどうにかなってしまいそうになる。

勿論恨まれるようなことをした覚えもなければ、そもそもこの人たちとは面識もないはずだ。

もし理由があるのなら知りたい。
けど、そう簡単に教えてくれるような相手ではないだろう。
そもそも理由があるのかもわからないし。

だから、早く板本君を逃がしたい。これ以上、辛い思いをさせたくない。
俺のせいで誰かが苦しむのは、…見たくない。


「ここまで来てお友達の心配か。…お優しいことで。それとも自分も危ない状況だって理解できてないのかな?」


指先がすーっと首元をなぞる。ぐ、と掴まれて締めあげられれば声を出すことすら叶わなかった。


「つーか、解放するわけないだろ。アイツはお前を服従させるための餌だ。みすみす逃がしてやる義理はないね」

「…っ、俺が何したって言うんだ。会ったこともないのに…っ」

「真冬クンは知らなくていいんだよ。知らないまま、俺達に輪姦される運命なんだから」

(…”まわされる”…?)

言葉の意味が理解できない。
はじめて聞く単語に、何を言っているのかと思う。

けど、この体勢を考えれば良くないだろうことは明らかで。


「黙って従ってれば、板本クンにはこれ以上酷いことしないから」

「…っ、」

「いいんだぜ?大事な”オトモダチ”捨てて自分の安全だけ確保しようってんならそれでも。俺達はこいつで遊ぶからよ」


男がそう言って笑った瞬間、刃が当たっている板本君の首筋から血が流れた。苦痛に呻く声。血の気が引く。


「月城ー。お前、前にこいつの写真見て、モロタイプだって言ってただろ。ハメんのは譲ってやるから、最初は俺からな」

「えー!隆宏先輩それはずるいっすよー!」


言葉とは裏腹に、声が楽しそうに笑いを含んでいた。
「真冬クンちょー下半身刺激する顔してんだよ。我慢できそーにねーからさ」と笑った男の顔が近づけられる。


「噛んだからアイツ殺すから」

(…噛む?)

「…っ、ん゛ん…ッ、」


キスされる。
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