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その言葉に、反射的に身体が震える。


「僕なら、柊君みたいに蒼様を避けたりしないのに、蒼様の想いを受け入れられるのに、どうしてあんなに好きになってもらってる柊君が蒼様を避けるのか理解できないって、許せないって思ってた。思ってた、んだ…」

「…思って、た…?」



ぼそりと呟かれたその言葉に顔を上げると、気まずげに笑う。
それはいつもの、板本君だった。


「うん。そう思ってたけど、一緒にいるうちに柊君の良いところを沢山見たから、今は、」


廊下で蒼のことを言われた時じゃなく、いつもの笑顔で。


「…今は、柊君のこと大好きだよ」

「……っ」


大好き。

本当、だろうか。
信じても良いのかな。

その表情は、嘘には見えない。


「それに、今日は止めようと――」

「黙れ」

「……っ、」


何かを言いかけた言葉は冷たく一蹴され、近くにいた蒼に引っ張られて抱き寄せられた。


「まーくん、人の言葉なんか簡単に信じないで。平気な顔で嘘がつける奴なんて沢山いるんだから」


冷たい声音に驚いて振り返る。
その間も、彼の冷たい目は警戒するように板本君をとらえていた。

まるで今にも板本君が襲ってくるんじゃないかと思っていそうな雰囲気に、蒼は逆に人を疑い過ぎじゃないかと思う。

板本君は殴られたり蹴られたりしていたし、グルだったらそこまでするのかな。


「僕だけが悪いの…?どうして、僕が、」

「悪くないわけないだろ。人を使ってまーくんを襲わせたんだから」


軽蔑するような蒼の言葉に、ぐ、と悔しそうに下唇を噛み締めた板本君が泣きそうな顔で叫んだ。


「今だって、あてつけるみたいに僕の前で柊君を大事にして…っ、僕の気持ち考えたことある?!!」


俺を庇うように肩を抱いている蒼を、見上げる。
完璧だと息を呑むほど、板本君を見るその顔に滲む感情はない。


「ああしたのだって、蒼様が…っ、柊君と離れてる間はあんなに僕のことを愛してくれたのに、柊君と仲直りした瞬間に僕のことを捨てようとするから…っ、僕は…だから余計に柊君が許せなくて、憎くて悔しくて狡くて…ッ、」


悲痛な板本君の本音が、耳をなぞる。
想像以上に深い感情の波がぶつかってきて、何も考えられない。

「激しく、愛して…って、」その言葉の意味を考えようとすると、「知らない。まーくんも深く考えないで」と強い口調で思考を遮られた。

俺の方に顔を向けると、頬を緩める。

空気が冷たい表情が、優しい微笑みにかわる。
板本君にではなく俺に向けられる視線が、板本君にとったら辛いことだろうとわかっているのに、……ほっとしてしまう。


「まーくん、帰ろう」

「…え?」

「心配だから、今日は俺の家に泊まって」


板本君が視界に入っていないように、見えていないようにふるまう蒼に、戸惑った。

帰る…?
こんなに、板本君が泣いてるのに…?
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