蒼に会いたい(真冬ver)

***


俺の願いは、ただ一つだけだった。


蒼に、会いたい。


ただ、それだけだった。


……ただそれだけのために、この身体を、声を、目の前の人の望むように動かす。


蒼に、会いたい。


「…っ、ごしゅじんさま、のみもの、ください…っ」


蒼に、会いたい。


「おれが、きもちよく、します…っ、ごしゅじんさまのために…」


蒼に、会いたい。


「…いっぱい、いっぱい、ごしゅじんさまのチンポから、お口にそそいでください…ッ」


……蒼に、会いたい。


「…ちんぽ、きもちいいれす…っ、いひゃ…っ、ぁああああ…ッ」


……………蒼に、会いたい。


「ぁ゛あああ…っ、いいいぁああああ…ッ!!パンパンに…ッ、こわれりゅ…ッちんぽこわれりゅうううう…ッ!!」


……………………蒼に、会いたい。



「も…ッ、くすり…ッやだ…っ、やだぁああああ…ッ、ぁ…っ、…ッぁ゛ああああああ――――――ッ」



……………………………………あおいに、あいたい。


「…っ、」


快感とは別の涙が涙腺を熱く刺激する。


……どうして、叶わないんだろう。


ただ、蒼に会いたくて、あいたくて。

ぎゅって抱きしめてもらいたかっただけなのに。


「まーくん」っていつもの優しい声で呼んでほしかっただけなのに。


……そんなことしてくれなくてもいい。


ただ、会いたい。


「…(蒼、あおい、あおい…―――――――っ)」


声にならない声が、何度も胸の中で泣き叫ぶ。

会いたい。会いたい。会いたい。

聞こえるのは、「家畜」って呼ぶ乱暴な声と、じゅぶじゅぶと自分の口の中から聞こえる粘稠性な音と、ドクドクと脈を打って発情期の動物みたいに息を荒げて射精し続ける自分の身体から聞こえる歪な音。


(…どう…して?)


どうして、今俺を抱きしめてるのは蒼じゃないんだろう。

どうして、俺の傍にいるのは蒼じゃないんだろう。


何時間たったかわからない。

何日たったかもわからない。

誰かに助けなんて求めない。

だって、弱者は強者に従うしかないんだから。

圧倒的な力の差があれば、従うしかないんだから。

俺には、こうするしか方法がわからないんだから。



「…っ、ん…ッ」


見えない視界の中、口の中で欲を放ったものが抜かれていく。

直後、何かが唇を塞いだ。

吐息と…柔らかくて薄い唇の感触。



「…ごしゅ…っ、ぁふ…っじんさま…ッ、」

「汚ねぇ家畜にキスしてやったんだ、感謝しろ」

「…あり、がと…っ、ございます…っ」


笑ってお礼を返せば、涙が溢れる。

嬉しいんだと、幸せなんだと思いながら涙を流す。

舌を絡め返して、熱い吐息を零して、違う人の姿を思い浮かべていた。


(…嗚呼、)

(……ただ、一目だけでもいい)


彼に、会いたい。


でも、その願いはもう二度と叶うことはないんだろう。

閉じた瞼の裏から、熱い涙が零れ堕ちた。
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