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ひとりでいたくない。
だれかに傍にいてほしい。
こんな風にずっと孤独を感じるくらいなら、心が潰れそうになるくらいなら、…いっそのこと死んだほうが楽だ。
蒼、蒼、蒼
……………あおい。
何度もその名を呼んで、でもその姿は目の前にない。
寂しい。
辛い。
苦しい。
悲しい。
痛い。
怖い。
死にたい。
…凄惨とした感情は、俺が暗闇に取り残されて、玩具の振動だけを感じている間、…底なし沼のように胸に広がっていった。
今までだって俺はひとりは嫌だったけど、蒼と出会ったことでそんな恐怖は以前と比べて大分減った。
…なんだかんだ蒼は俺を捨てないで傍にいてくれると思ってたから、そういう存在に出会うことが出来たと思ったから。
蒼がこれからはずっと傍にいてくれる。
蒼の優しい言葉は、声は、不安な時、寂しい時、すごく心を落ち着かせてくれた。
その温かな表情が、俺の頭を撫でてくれる手が、蒼の全部が大好きだった。
何度も思った。
……ずっと蒼と一緒にいたい。
そう伝えたら、蒼も俺の気持ちに応えてくれた。
約束してくれた。
「ずっと一緒にいる」って、約束してくれた。
…恋人なら、お互いに嫌い合って別れちゃうこともあるけど。
(……でも、友達なら、「友達」って言う関係なら、ずっと一緒にいられるんだ。)
きっと、蒼は俺がそういう行為をするのが嫌だって言っても、一緒にいるために、普通の友達みたいに傍にいてくれる。
俺の気持ちを、分かってくれる。
…心のどこかでそんな安心感があったから…だから、蒼のすることに対していやだって、やめてほしいって…そんな抵抗の意思を示せたんだ。
捨てられないって思ってたから。
いつかは前のように友達に戻って、「ずっと一緒に」って約束を守ることができる。
そう信じてたから、俺は中学の時…これからも友達でいたいって伝えたのに。
気づけば、俺達の関係は完全に”友達”のものではなくなって、…ついにはあの時俺は自分自身の恐怖に負けて、その願いを破る約束をしてしまった。
自分で、願いを潰してしまった。
俺は、蒼に、その存在に無意識のうちに甘えていたんだと思う。
この人なら俺を捨てたりしないって…俺から離れたりしない…って…なぜかそう心の底で思っていた。
…でも、そんなことはなくて。
蒼は、いつでも俺を捨てることなんか簡単にできたんだ。
あの暗闇に取り残される恐怖は、俺にそのことを嫌でも実感させた。
…だから、俺は、選んだ。
(…蒼を”好き”になるってことを。)
捨てられないために、蒼にとっての「いい子」になることを。
自分が恐怖を感じたくないという気持ちだけで、俺は蒼に何度も嘘をついた。
”好きだ”、”愛してる”
そんな形だけの台詞を何度も吐いた。
でも、その時何かを選んだのは俺だけじゃない。
俺が、たとえ形だけでも”好き”だと言って蒼を繋ぎとめることを選んだと同時に
蒼は俺の気持ちが”本当”じゃなくても、気持ちがなくてもいいからと言って、無理矢理にでも、昔の俺との約束を果たすことを選んだ。
結局、蒼も俺も、形だけの偽物の恋人になることを選んだんだ。
でも、そんな歪な関係がずっと続くわけがない。
元々壊れていた関係はもうすでに修復できないものになって、その結果、…今こうして俺と蒼はまた離れ離れになった。
……蒼に「ばいばい」って言われたこと…「もう会わない」って言われたこと…そして、まだ俺が蒼に依存しているうちに蒼が他の彼女を見つけてしまったこと。
俺にも今は新しい御主人様がいて、今の今まで蒼との、その大切な記憶と約束さえも思い出せなかったこと。
悲しいけど、苦しいけど、それが事実で、
俺と蒼を繋ぐ糸が、もう昔みたいに穏やかに絡まることは、もうない。
……ないんだ。
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