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「…なに、して、」

「ん?飲んだんだよ?」


ケロリと当たり前だというような顔でそう笑みを浮かべる男に、思わず反射的に眉が寄る。
俺の方が至極真っ当な反応だというのに、それを見て、何故か不思議そうな顔をされた。


「え?君、蒼くんとそういう関係じゃないの?」

「………」


…そういう関係と言われれば、そういう関係なんだろうけど。
蒼には、その、触られはしても、…そんな風に口に入れられたことなんかない。


「嗚呼、蒼君は君にしないのかー。そっかー。あは、じゃあ俺が初体験だね」なんて笑う男に、そんな冷静ではいられなかった。


「………う…っ、ぅ゛う…っ」


…今更ながら、普通に、男に咥えられてイってしまったことが、感じてしまったことがショックで。
眼球が熱くなって、ぽろぼろと涙が零れる。
…こんなことで泣くなんて情けないとは思うけど、止まらなかった。


「あはは。なんか本当にレイプしたみたい」


そう言って笑って、近づいてくる男の手にびくりと震える。
怖い。もう嫌だ。
涙をごしごし拭って、床に当てた手に力を入れた。
泣いてる場合じゃない。


「……(とりあえず、少しでもこの人から離れないと…)」


イッたばかりで力の入らない身体に鞭うって、男から顔を背ける。

何も言わずに床に這いつくばりながら扉の方に向かおうとすると、わざとなのか、さっき蹴られたところに後ろから指をぐ、と押しつけられて、「ぃ…ッ」と床に突っ伏して苦痛に呻く。


「なんで離れよーとするの?」

「……」


自分の行動を見返してほしい。
ずきずきと痛む身体に手を当てて、思う。

(あざになってるかもしれない…。)

そう思うと同時に、全身から血の気が引いた。


「…どうしよう…」


この状況がばれたら、蒼は絶対に怒る。
他人に身体を触られただけで怒られるのに、こんな状況を見られたらどうなるかわからない。

……いくら俊介のことがわかるっていっても。

簡単に鍵なんか、開けるんじゃなかった。

握った指が震える。


「何?どしたの?」


能天気な声音で問いかけられても、恐怖で心臓がばくばくして、それどころじゃない。
青ざめる俺の顔を見て、ああと思いついたように呟く。


「ああ、蒼くんにばれたらってことか。たいじょーぶだよ?多分あっちもお楽しみ中だろうし」

「お楽しみ、ちゅう…?」


って、どういう意味ですか。
と、問おうとする前にのしかかってきた男の人が、ソレを目の前に差し出してきた。
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