10
普通、目の前に持ってこないようなモノ。
……毎日見ていた蒼のと比べると、小さく見える……けど、普通に、傍から見て明らかに勃ってるソレに、反射的に身体と思考が硬直する。
唇が震える。
「…な、なん…」
なんですか、と全部言う前に相手の目で、相手が自分に何を訴えているか、分かってしまった。
(ま、まさか…、)
咥えろって言いたいのか。
青ざめていた顔をさらに暗くして、それから目をそらす。
いつのまにか、鎖を相手の手によって握られていることに気づいて、背中に冷や汗が流れた。
「こーいうこと、蒼くんとシタことある?」
「……っ、」
……ない。あるわけない。
ふるふると首を振ると、「そっか。よかったー。こっちも初体験いただけるなんて最高」なんて、呟かれて。
逃げようと身体を起こそうとした瞬間、手に持った鎖を巻き込んで引っ張られて、ソレの前に顔を持っていかれる。
左腕が持ち上がると同時に、手枷が皮膚に強くこすれて痛い。
「…痛…ッ、いやだ…っ」
「んー、いやがられると余計にさせたくなっちゃうなぁ」
鼻歌でも歌いそうな口調に、そうだった、この人は蒼と同じタイプの性癖を持ってる人だったんだと思い出した。
[back][TOP]栞を挟む