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口元にその見たくもない物体を近づけさせられて、顔を背けようとした瞬間、一瞬頬にぺちんと触れて吐き気がした。


「…ッ!!」


(気持ち悪い…)

濡れた感触が頬にべっとりとくっついている。

流石に、受け入れたくない。

これ以上、こんな自分の状況に慣れたくない。
何が好きで、男のソレを咥えないといけないんだ。

そもそも、俺は別にもともと男が好きなわけじゃない。

好きで蒼とだって、そんな関係になったわけじゃない。
なりたかったわけじゃない。
でも当たり前のようにそれを実行した目の前の男に
自分がおかしいのか、相手がおかしいのか、正直分からなくなってきた。

(咥える…)

一瞬それを実行する自分の姿が思い浮かんで、本気で吐きそうになる。


「咥えてよ。どうせ、蒼君はしばらく帰ってこないんだし、へーきだよ?」


そういうことじゃない。

蒼にばれる云々の前に、生理的に嫌だ。


「あの…っ、…ッ!!」


口を開いた瞬間、中にそれが入りそうになって慌てて閉じた。
分泌物を増したらしい性器の匂いが濃くなってて、余計に身の毛がよだつ。

(…、ちょっと唇に触れた…)

青ざめる。
触れた瞬間に、ぴくんと反応した目の前のモノには気づかなかったふりをすることにした。


「んー?何?やっとシてくれる気になった?」


無理やり突っ込むのもありだけどね。なんて言われて、そのさらりと言い放たれた言葉に寒気を感じる。


「まぁ、まだ時間あるし、聞いてあげてもいいか」


口を開くだけの距離は開けられて、多少ほっと安堵しながらも未だに視界には入ってくる物体からできるだけ顔をそらした。
ぐ、と唇をかみしめて、息を吸う。


「…俊介のメールは、いつ見せてくれるんですか」

「あー、忘れてた」


そんな大事なことを忘れないでほしい。
俺はこのせいで、こんな目に合ってるのに。
思い出したように、ポケットからそれを出す動作を見る。
見せてくれるのかと思いきや、またそれをポケットにしまった男は、にやりと笑った。
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