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「やっぱりタダで見せたくないから、もし咥えてくれたら見せてあげてもいいよ?」

「…っ」


…タダっていうか、もう随分色々されたと思うんだけど。

本当に、これをしなければ意地でも見せてくれなさそうだ。
ぐいと鎖をもう一度引っ張られて、結局振り出しに戻ってしまった。

もしかしたら、

少しでも時間を稼げば、蒼が来てくれるとか、この人の気が変わるとか、もしかしたらって期待してたけど…。

…この人の言うことからすると、蒼は、来てくれそうにない。


「…なんで、こんなこと、」


思わずぽつりとつぶやいた言葉は、男の耳に届いていたようで、「なんでって、しゃぶって苦しむ君の姿が見たいからだよ」と当然のように言われて、絶句する。



「何、言って、」

「それに俺、昔蒼くんのこと好きだったんだ」

「…へ?」



目の前の物体のことばかり考えていたせいで、一瞬その人の言ってることを理解出来なかった。
……好きって、どういう意味の好きなんだと考えていると、それが顔に出たのか彼はにこにこと微笑む。



「もちろん、性的な意味でね?」

「……」


「だから、蒼くんの大事にしてる君のハジメテをもらえるって、なんか興奮しない?」なんて問われても、そうですねなんて頷けるはずもない。

男が身動きしたせいで、鎖が音をたてて揺れる。
手首が擦れて痛みに顔が歪んだ。


「4年くらい前だったかなー。蒼くんってさ、すっごい綺麗な顔してるから、最初はそれで興味持って、」

「……」

「その後、蒼くんのやばーいヒミツを知っちゃって、その時の興奮といったら人生初の電撃が走ったようなものだったよ」



…4年前って言ったら、蒼って中学二年生だよな。

もうその歳から、こんな人に好かれていたのか。
思い出したのか、頬を赤らめる男が興奮というのだからその言葉の通り、本当にそういう気持ちになったんだろう。
そして、耳にした別の言葉に、ぴくりと反応する。


「……ヒミツ?」

「うん。屋敷の二階の右行って突き当りの部屋、行ったことある?」

「……ない、です」


男がいきなり何故そんなことを言うのか、わからなくて、戸惑う。

(…そこに、蒼の秘密がある?)


「ほら、咥えてくれたら、携帯にその秘密の詳細もつけて出血だいさーびす」


興味を引かれはしたが、それでもやっぱりそれがあるならやろう、という気分には当然なれるはずもないので、ぐ、と唇を噛んで俯いた。
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