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今までとは全く違う種類の要求。
(…恋、仲?)
意味がわからない。
突然、なんで
…思いのほか動揺している自分に気づく。
いや、その単語の意味は分かっている。
でも…何故自分がそうしなければいけないのか理解できない。
呼吸をするのも忘れて、声を絞り出した。
「…理由を、教えて下さい」
「俺の言葉に従うのに、理由が必要か?」
「…、」
今までなら要らなかった。
必要なかった。
理由を聞かなくても即頷けた。
わかってる。
…こういう場合、そういう”振り”だけでもしておけばいい。
本当に相手なんか好きにならなくてもそう見えるように演じるか、相手を脅しておけばいい。
でも、
(…でも、俺は)
どうしても、まーくん以外とそんな間柄になるのは考えられなくて、
考えたくなくて、
想像するだけでも吐き気が込み上げておかしくなりそうだった。
だから、躊躇ったせいで一瞬返事が遅れる。
視線を逸らした俺は、相手の口角が歪に上がったのに気づかない。
「…柊真冬、か」
「っ、」
その唇が名前を呼ぶのを聞いて、心臓が大きく跳ねる。
全力で反応が表に出ないように意識した時には、既に遅かった。
面白そうに嗤う声。
「俺に逆らえばコレがどうなるかしらないが…お前は拒否するのか」
「…いいえ」
何度となく言われた脅し。
内心相手を殴り殺したい感情でおかしくなりそうになりながら否定すれば、ク、と喉の奥で嘲るように笑う声。
「そうだろうな。あの子どもが大切だもんなぁ?」
髪を乱暴に掴まれて揺さぶられた。
皮膚が焼けるような痛みが走る。
同時に首輪から伸びる鎖も引っ張られて首が締まった。
脳に行くはずの首の血が経路を狭くしたせいでドクドクと鳴って煩い。
唇を噛んで零れそうになる悲鳴を飲みこむ。
「っ…わかり、ました…」
「もしお前が従わなければ、あんな子どもいつでも殺せるんだからな」
「…はい」
そう言うしかない。
断れるわけがない。
頷いた俺に気分を良くしたその男は機嫌よく笑って部屋から出ていった。
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