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10分放課になった。
学生達がざわざわと話しながら席を立つ。
…誰かと恋人的な関係になる、なんていっても学校にいる女になんか全く興味ない。
むしろ触られるだけで身の毛がよだつ。鳥肌が立つ。
…かといって、屋敷に客としてくる女は余計に面倒くさいのが多い。
(…でも、どうにかしないと…)
焦燥感で胸が潰れそうになる。
こんなくだらないことで、まーくんを危険な目に遭わせるわけにはいかない。
頬杖をついて、教室の窓から見える景色を適当に眺めながらはぁとため息を吐いた。
「あ、蒼君…っ」
(……)
声の方向にゆっくりと振り向く。
毎日のように来る女たちの媚びたような声。
べとっとした雰囲気と頬を紅潮させて俺を見る目。
「何?」
「ここがわからないんだけど…教えてくれない?」
正直言って気持ち悪い。そんな気分じゃないし。
…けど、
見なくても感じる廊下からの視線。
教師だって例外じゃない。
断ったら報告されるから拒否することさえできない。
「……いいよ」
「あ、ありがとう…!」
嫌悪感を隠しながら笑顔を作れば、小さく黄色い声を上げていそいそとノートと教科書を見せてくる。
わざとらしく身体をくっつけてくる女から逃げるようにさりげなく身を引いて距離をあけた。
近づけば香水みたいな匂いがする。
…臭い。
こいつ等も皆一緒だ。
屋敷によく来る女たちと一緒。
女だけじゃない。
あの男の奴隷達だって、屋敷によく来るお客とかいう男達だって、
…俺を”そういう目”で見てくる。
気分が悪い。吐き気がする。
でも、
「…(…まーくんは違った)」
まーくんだけは、そんな風に俺を見たりしなかった。
一緒にいても気持ち悪いと思わなかった。
純粋で、汚れてなくて、綺麗で…全部がふわふわしてて…癒された。
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