3

なぜだろう。

まーくんだって他のヤツらと同じように俺に好きって言っていた。同じはずなのに。
なのに、他のヤツらに言われる感覚とは全然違った。

…なんか、普通じゃない感じ、というか……表現しづらい。

心の中でさえうまくまとめられなくて、少しだけ首を傾げる。


「でね、ここの式がね…」

「……」


その声に従ってチラリとノートに視線を落とした。
数式の羅列。
どう考えたって、わからないわけないだろうと思えるくらい簡単で初歩的な問題。

…俺に聞くためだけにわからないふりをしているとしか思えない。


(…面倒くさいな…)

怠い。正直本気でそう思う。
あの人がいきなりあんなこと言った狙いもよくわからないし。
…素直に従っていいことがあるとも、思えない…けど。

…でも、まーくんを守るために利用できるものなら何でも利用してやる。
使える駒がいるならいるに越したことない。

今までだって散々女に媚びうるために色々なことをやらされてきた。
どうしたら女が喜ぶか。どうしたら自分の都合の良いように動くか。

…それと何も変わらない。

一度瞼を強く閉じて意識を切り替える。

口元に微笑を浮かべた。


「…っ、きゃ、あお、蒼く、ん…っ?」

「…あのさ、」


机の上に置かれている女の指を覆い隠すように軽く自分の手を重ねる。

と、

驚いて目を瞬いて、頬を上気させてこっちを見る顔。
「え、えっと、あの…」なんて照れたようにこっちをチラチラ見て期待するような視線。
”オンナ”の顔。
じっと見つめ返すと、顔を赤くしたまま目を逸らした。


(…全然可愛くない)


どうしてこんなに惹かれないんだろう。
クラスでは一応男受けが良い方の女のはずなのに、全部が全部わざとらしくて魅力が一つも感じられない。

失望して、でもそれを隠すように無理矢理唇を動かす。


「俺と、付き合わない?」

「…っ、」


名前さえ覚えてない相手に、心にも思ってない言葉を囁く。
相手の頬が興奮に朱色に染まるのを見て、優しく微笑んだ。
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