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✤✤✤


(…また、いる)


授業中。
窓越しに校門を見下ろすと黒い車が一台。

…まーくんに危ないことがないように、常に周囲を警戒しなければならない。


問題なのはその人数が何人かわからないことだ。
それにどこから来るかもわからない。

…数秒でも気を緩めたら、どうなるかわからない。


「…(あの人に、言われた言葉)」


思い出す。
まーくんが襲われそうになった日にした通話は、着実に俺の精神を擦り減らし、蝕んでいた。


――先日、屋敷の中。
携帯を耳に当てる。プルルル…と無機質なコール音がぷつりと切れた。


「…どういうつもりですか」


”何の話だ?”

電話をした用件なんかわかっているはずなのに。
とぼけたふりをして相手に感情を引き出させようとする。俺が怒りを声に出すのを今か今かと待って、愉悦を隠しきれていない声が耳元から聞こえた。

”お前をタダで柊 真冬と同じ空間に居させると思ったか?は…っおめでたい息子だ”


「…っ、」


”せいぜい柊 真冬が他の人間に使い物にならなくされる前に何とかするんだな”

お前だって初恋の男と一緒にいるだけではスリルがなくてつまらないだろう、と続けて嗤った声は、「…っ、そ、」俺の非難の返答も待たずにプープーっと通話が切れた音に変わる。

全身から血の気が引くような思いと、同時に湧き上がってくる激しい怒り。

相変わらず玩具で遊ぶ子どものような。
ゲームみたいに人の命を軽々しく扱う考え方が気に入らない。

その日から更にまーくんの跡をつけてくる男の人数が増えた。
それが増えれば増えるほど、対処が難しくなってきて、募る疲労と焦燥感。


「…(…俺が、早く何とかしないと)」


まーくんは元々俺に巻き込まれただけで、何も悪くないんだから。
傷つけさせるわけにはいかない。


「…蒼君、ここ…どうしたの?」

「ああ、うん。ちょっと切っちゃった」


心配そうに俺の唇の端に触れてくるまーくんから視線を逸らして、冗談っぽく笑ってみせる。


「大丈夫?」

「ありがとう。…まーくんは優しいな」


いい子、と呟いて会話を逸らしつつ、微笑んでよしよしと頭を撫でる。
昔まーくんが喜んでくれたことをすると、まーくんは嬉しそうに頬を染めて首を振った。

…やっぱり、あの頃と変わってない。

ついでにさりげなく首元もワイシャツの襟で隠しながら、今日もまーくんと話が出来て幸せだなって思った。
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