3

ずっと元気がなくて、暗い表情でいることが多くなった。

…どうにかしようとすればするほど空回りしているような気がして…でもどうしても以前の笑顔を取り戻したくて、また向けてほしくて必死だった。


「…何か、してほしいことある?足りないものがあったら何でも言って」


そう聞く度にいつもまーくんは沈んだ表情でいらない、と首を振る。
それは遠慮してるわけではなく、本当に何もいらないのだと言う。


御飯も作って俺が食べさせて。
身体も洗って。
服も用意して。
まーくんが以前好きだって言ってたものは全部用意した。


…一体、何が足りないんだろう。
最初は逃げようと抵抗していた身体は今はもう無抵抗で、俺の脚の間に腰を落ち着かせて、後ろから抱きしめられるのを拒まない。


(…でも、)


それは俺を受け入れたわけではなくて、すべてを諦めたかのような…そんな感じで。
暗い影を顔に落としたまーくんはほとんど何も反応しなくなっていた。


「まーくん、どこか行きたい場所ない?」

「…ない、」


どうしてまーくんがそういう表情ばかりするようになったのか…その原因はわかっているはずなのに、俺の心は答えを目前に突き付けようとしない。
見てみないふりをした。していたかった。

だからっていって、無理にどうこうしようとは思っていなかった。
時々屋敷に偵察に来る父が


「そんなに我慢して何になるんだ。どうせ傷つけるなら早めに嫌われておけばいいだろう」


と、注射器で変な薬を打って俺にわざと襲わせようとした時だって、まーくんには必死に手を出さないように、目に入れないようにしていた。


…なのに、

段々増えてくる薬のせいか、最近頭がやけに鈍くて、なんでこんなに我慢してたんだっけ…、と自分の今までの感情すらよくわからなくなって、…


「…蒼様も最近ご機嫌が優れない様なので、ご一緒に参加されますか?」

「必要ない。」


黒服の言葉に勝手にやってろ、と返答しようとして、気づく。


「…あ、」


そうだ。
この手が…あった。

例の部屋の前を通り過ぎた瞬間、聞こえてきた声。

不意に思いついた思考が誘惑してくる。

今までの誰もがああいうことをした人間に執着するようになっていた。
その行為自体に夢中になっていた。
離れられなくなっていた。


…まーくんにもそれと同じようにすればいいんだ。どうして今まで気づかなかったんだろう。


そして、


「…っ、ぁ゛!は…っ、ぁ…っ!」

「……」


部屋に響く喘ぎ声。
…そして、性器のナカで震える機械の鈍い振動音。


思った通りだった。
気持ち良くなるとまーくんは泣いて悦ぶ。
普段は嫌そうに顔を背けてばかりで、口数も少ないのに。
…俺を見てくれることもなかったのに。


「そんなに気持ちいい?顔、蕩け切ってる」

「…っ、くるし…っ、ぁ゛…っ、やぅ…っ」


…でも今はこんなに厭らしい顔で、熱く潤んだ瞳で息を吐いて。
もっとして欲しいと腰を自分から押し付けながら、俺を誘ってくる。

こうしてキモチイイことをしている時だけ、俺に甘えて縋ってくる。

その瞳に自分が映った瞬間、全身に広がる安堵と充足感。


(…嗚呼、やっとまーくんの中で俺が存在できた)


首筋に這わせていた舌を段々下ろしていって、散々弄りまくった乳首の上に軽く唇を触れさせた。
ピンと硬くなって赤く腫れた乳首はそれだけで敏感に反応してくる。

舌先で刺激すれば、その度に声を上げながらヨガっていた。

やっぱりこれが一番良い方法だったのかもしれない。

唇を重ねれば、延々と快楽を与え続けられたまーくんは夢中で自分から舌を絡めてくるようになった。
余裕のない表情で、必死に舌をのばして俺を求めてくる。…可愛い。


「まーくん、最近キス慣れてきた?上手くなってる」

「…っ、イきたい…ッ、あお…っ、おねが…っ、」

「…どうしようかな。もっと可愛くおねだりしてくれたら考えてあげてもいいけど」


そのままでも充分可愛くて綺麗だ。
…でも、もっと欲に溺れた姿が見たい。
どろどろに蕩けて、息を乱して、頬を染めながら理性なんかぶっとぶくらい快楽に溺れてほしい。


「…そ、んな…っ、あおい…、ッ、がまん、できな…っ、」

「…んー、今日はお仕置きも兼ねてるから優しくできないな。まーくんが反省するまで続けないと」

「、…なんか、い、あやま…っても、ゆるしてくれなか…っ、」

「…だって、俺のちょっといなくなった隙に男と話すから」


実際私用で俺が出かけていた時に黒服が勝手に話しかけただけで、まーくんは悪くないってわかってる。
…わかってるんだけど、それにまーくんが応答したのが許せなかった。自分でも自覚してしまうほど幼稚な嫉妬。


「…っ、ぅ、イきたい…っ、やだ、やだぁ…っ、もう、やだ…っ、こわれ、る…っ、あお…いっ、」


荒い息で、鼻にかかったような掠れた声で縋ってくる。

自分から甘えてきてくれる姿はこっちがどうにかなりそうになるほどの妖艶さで、俺が作った服をはだけさせて白く精液で汚しながら、涙目で裾をきゅ、と掴んで「おねが、い」と上目遣いで見上げてきた。


あーやばい。なんか見てたらこっちも精神的にやばくなってきた。とっくに限界は超えてたけど。


「そんなにイきたい?」

「…ん…っ、イき、たい…っ、ぁ゛、…っ」


指の先でピンっとその痛そうなくらい勃起した部分を弾く。

その刺激で、尿道にバイブを奥まで挿れて、時々抜き差しされながら軽微に振動され続けたことによって何十回も数え切れないぐらい(数時間程度)ずっとイキそびれていた性器が、ビクビクっと苦しそうに小さく跳ねた。

…これだけ長い時間射精管理されててよく気絶しないものだと感心する。

切羽詰ったような表情でコクコク可愛く数回頷くまーくんに「わかった」と了承して、ベッドの端に腰かけて組んでいた脚を解いた。

喜びに顔を染めているのを見て「でも、条件付き」と付け加えた。


「腰ちょっと上げて、1分間そのままでいられたら抜いてあげる」

「…っ、ぇ…っ、」

「はやく。制限時間、いーち、」

「っ、ん…っ、んん゛ぅ…っ」


目の縁からぽろぽろ涙を流してふるふると首を振っているのをわざと無視して淡々と秒読みしていく。

尿道と後孔を長いバイブで不規則に責められながら、焦ったような表情で仰向けに寝転がっていたまーくんが一生懸命ベッドの上に後ろ手をついて腰を浮かす。ブリッジ体勢。

力がうまく入らないのか、全然できてないけど。


(…すごいエロい眺め)


卑猥。

まーくんが腰を浮かせてその部分を天井の方に突き出しているせいで、角度的にさっきよりもバイブが飲み込まれている部分が見やすくなった。

そして更に、無防備に自分から掲げているような感じで見せる格好になっている…まーくんの性器。

硬くなって上を向いた性器の尿道の部分からは微かにバイブの先端が外に出ていた。
そこから、先走りのような液体がぽたりぽたりとベッドに落ちる。
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