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そこをなぞるように舌で這わせれば、唇を噛んで声を必死に抑えている。
暑いのか、舐めた舌に汗の味が残った。
ぺろりと唇に残っているその塩気も拭い去るように舌を駆使して飲み込む。



「そうやって本気で抵抗しないから、こんなことされちゃうんだよ」

「…ッ、!」

「…ああ、違うか。酷くされる方が好きなんだっけ」

「…ち、ちが…、ぃ…っ!!」



嘘つきだな、まーくんは。

噛みちぎる勢いでその耳の辺縁をガブリと噛むと、大きく震えて、ぎゅっと目を瞑った。
軟骨の感触が歯にあたって、柔らかい皮膚に食い込む。

…跡、まだマシになったかな。

キツく噛んだおかげか、男がつけた傷は俺が今新しくつけた歯形によってほとんどわからない状態になった。
でもその跡から更に量の増えた血が滲んでいる。
ぺろりとなぞるように舐めてみた。…薄い鉄の味。



「まーくん…目、閉じないで。俺の方をちゃんと見て」



「開けないと、無理矢理開かせるけど」と冷たく声を零せば、恐る恐るその瞼が開いてこっちを向く。
かなり痛かったのか、既にその瞳は涙で潤んでいた。



「…暴れないんだ?」


勿論鎖はつけているけど、手首を片手で纏めているだけの状態ならもっと逃げようとするとか、そういうことをしないのだろうか。


「……」

「…ま、別に答えなくてもいいけど。全部消毒するまでやめない気だったから」


抵抗する気がないならそれはそれで楽でいい。
軽く瞼を伏せて、監視カメラで見た男に触られた部分を舌でなぞる。


「…っ、そんなとこ、舐められたりしてな…っ、」

「でも、触られてた」


あの害虫が触ったところは全部自分が上書きしないと気が済まない。
俺の痕をつけて、刻んで、染み込ませて、滲ませて、…ちゃんと覚えていてもらわないと。
舌先を動かすと同時に息が肌に触れると、「…ん、…ん、ふ…ッ、」と結んだ唇の端から零れる吐息。

首筋をおりていくと、鎖骨に到達した。

着物を片手ではだけさせ、肌を露出させて、すべてを上書きしていく。
頭の上で聞こえる、少し音が高くなった上擦った声。



「…ッ、ひ、や、やめ…っ、そこは、やだ…っ」

「…ついでだよ。ついで」

「っ、ついで、って、…ッ、ん、」



昨日も散々機械で弄りまわした乳首が、まだ赤くぷっくりと腫れたままになっている。
唇で軽く触れるとそれだけで敏感になっている肌がぶるぶると小刻みに震える。



「そんなこといって結局乳首勃たせてるくせに、何言ってんの」

「…ッ、ふ、ぇ…っ、」


冷めた口調で軽く詰ると、キツく噛んだ唇から涙交じりの声を漏らす。
顔を見てないからわからないけど、…きっと泣いてるんだろうと思った。
…容赦なく舌と唇を駆使して腫れたままの乳首を転がしていれば、「…っ、ん、んん…ッ」と熱い吐息を含んだ声。



「最近、乳首だけでイクような淫乱な身体になっちゃったもんな」

「…っ、だって、ずっと変なの、ばっか、ぬられて…っ、」

「…へぇ、素直に認めないまーくんにはもっと嫌な意地悪しようかな」


俺の言葉に、ぐ、と息を呑んで言葉に詰まる。

まるであれは自分のせいじゃない、とでも言いたげな視線。
俺の方が位置的に下にいるから、自然とその顔を見上げる形になる。
既に頬が紅潮していて、完全に感じてる時の表情。

流石に男で乳首だけを触って射精ってあり得ないと思ってたけど、意外にやり続けてたらできてしまった。
その時も乱れ方凄い可愛かったし、男で乳首だけでイクなんてと快感とは別の涙を流していた姿にもゾクゾクさせられた。


(…本当、まーくんは俺の心を掻き乱す天才だな)


改めて思う。

でも今日は気持ちよくさせることが目的じゃないから、中途半端に弄ぶだけ弄んで別の場所に視線を移した。物足りなそうに息を漏らすまーくんはとりあえず保留。

流石にこれ以上は手首を掴んだままだと難しいから鎖で両方の手首を纏めて動かせないように固定した。

更に肌着を脱がせて、胸の下から白い透明感のある肌の上を視線でなぞっていく。
…あった。
真新しく皮膚に浮かんでいる青あざをみつけた。
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