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…………

………………


何度目かの行為の後、


「もう限界?」

「ろ、と、ろっほらけ、らすらせ…」



…そりゃあこれだけイッてればこうなるだろう。元々何十回もイかせた後の行為なんだから今頃気絶しててもおかしくない。


でも、なんとか虫の息でも呼吸をしているまーくんは喘ぎ過ぎてほとんど掠れて出なくなった声で休憩を求めてくる。
その顎から滴る程の汗を拭おうと、頬を舐めた。うん、まーくんの味。



(…というか、やめるんじゃなくて休ませてなんだ…?)



合計で何百回ってくらいイッたんじゃないかと思えるほどビクビク痙攣し続けて、今もぐったりと俺の胸に顔を預けている。

その顎を掴んで唇を奪った。
味わうようにねっとりと口づけて、ゆっくりと離す。




「ちょっと休憩したらあと一回だけシようか?」

「……」




今までのやりとりでどんなに逆らっても意味がないことを知ったらしいまーくんは俺の言葉にコク、と弱々しく頷いて、


でもそのまま動きを開始せずに至近距離でじっと見つめてくる。


「ん?どうかした?」


そこまで熱い視線で黙視されるのが気になって問いかけた。
髪を撫で、意識的に頬を緩ませる。

くっついた肌越しに、伝わる鼓動。

小さくて形の整った唇が、動く。


「…なんれ、そんなに格好いい、…の…?…」

「…え?」

「…あお…い、みてると…なんか、へんら、かんじ、…」


…舌がうまく動かずに、多少舌足らずな声。


唐突で予想できなかった言葉に、

一瞬対応が遅れてうまく言葉を返せなかった。


俺の服をぎゅっと掴んで、そして自分の胸にも手を当てて…困ったようにひたすら首を傾げている。


「…あれ…?…よく、わかんないけど…ずっろ、まえから、どきどき、して…」

「……」

「…しんぞうの、おと、…うるさ、…ぐらいに、とまんなくて、」


それが薬の副作用のせいだとは判別できないらしく
頬だけでなく耳までも赤くした表情でまるで恋する乙女のようにぼうっとして、答えを求めるようにこっちを見つめてきた。


息を呑む。


「…それ、…は、…」

「…それは…?」


暗唱するまーくんから、視線をふいと逸らす。


…なんて、答えるべきだろう。俺はどう返せばいい。


少しだけ言い淀んで、ふ、と強張っていた身体から力を抜く。


息を吐くように、声を零した。


「…まーくんが俺のことを好きだからだよ」

「…っ、す、き…?」


声帯から形成される音が震えているような気がするのは、きっと錯覚ではない。


「……俺を愛してるってこと」

「…愛、してる…」


…そんなわけない。

わかってる。



でも、


嘘でもいい。
今だけでもいい。


「なぁ、まーくん。愛してるって言って?」


汗で濡れて肌に吸い付いている前髪を指で上げて、その額に唇で触れる。
触れられた本人は、くすぐったそうにぎゅ、と目を瞑った。

――――――――――

他の誰でもない。

その唇で俺に、他の何にも代えられない言葉をちょうだい。
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