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「…っ、」


………まーくんが、俺に会いたいって思ってくれた……?


そんなはずない。

でも、もしかしたらって思って。


(…だって、あの時…本当はそうなるように、そうしてくれるように、ギリギリまでまーくんを追い詰めて、壊して、歪ませようとしたのは俺なんだから)


自虐して。
否定して。
望んで。
拒絶して。

祈って。

……胸が、震えた。


自然と身体に力が入って、揺れた腕のせいで鎖が音を鳴らす。
微かに開いた瞼を通じて落ちてくる血なんか気にならない。


…来てくれようとしたから。

それだけでもう俺の意思を変えるには十分すぎる出来事で、

死んでもいいかな、なんて思った心はすぐに砕けて消えそうになる。


「……ッ、…嫌、だ…っ、」


無意識に零れる、未練。


……やっぱり、まーくんに会えないまま、死んでいくなんて嫌だ。

あんな顔をさせて、あれが最後だなんて…嫌だ。

…そう思った。


「…(…もう一度、まーくんに…会いたい)」


会いたい。

……逢いたい。


…でも、


『…ッ、ぁぁあぁ――ッ!ん…っ、ふ…ッ』

『あーあ、傷だらけにしやがって。がばがばじゃねえか』

『ひぁ、あぁっ、…ッ、あぁっ、んぅ…』


声。
監視映像から、流れてくる…音。


そして、


「…っ、まー、…くん…?」


呟いた声が震える。

音の方向に視線を落として、目を見張った。
ぐにゃりと、世界の平衡感覚がおかしくなる。

もう鎖は外されているのに、それでも…身体が凍り付いたように動かない。
…動けなかった。


地面から足を接着剤でくっつけられたように、足が鉛のように重くてビクともしない。


「…………まーくん」


(…本当、に?)


勿論、画面越しなわけで俺の声に応えるものはない。

指先で触れた手は触れたい相手に届かなくて、意味を成さなかった。
いつの間にか真っ赤に染まっていた着物さえ、視界に入らない。


まーくんまーくんまーくんまーくんまーくんまーくんまーくん



「……何、これ…」


アレはまーくん、のはずなのに。



『ごしゅ、じ、さま…ッ』

『…はは…ッ、』


「……ッ、」


頭の上から冷水をぶちまけられたような、気分と体温の低下。
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