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結婚する話に了承してくれていたのは結局蒼様じゃなかったけど、それでもそういうことで私はここにきた。
もう準備は進んでいるのだ。
色んな方に話は通してあるし、もう取り返しのつかないところまで事は進んでいる。
…今更拒んだって蒼様一人ではどうにもできない。止められない。


「結婚、してくださるって言いました…」

「……結婚、…?」

「…っ、どうして、私じゃだめなんですか…!」


私の方がずっと想っているのに。
あんな男より、私のほうがずっと…っ、


(どうして、あの男だけが、どうして…っ、)


「…こんなのおかしい…、絶対、おかしい…ありえないわ」


私の方が相応しいはずなのに、蒼様に見合うのは私の方なのに。
こんなの、絶対におかしいのに。






「…だめ、じゃないかな」

「…え?」


不意に耳に届く、声。
一瞬聞き間違えかと思って、顔を覆っていた手を外す。

高鳴る胸を抑えきれずに、ゆっくりと上を向く。

今度こそちゃんと合う、視線。


「もし、俺の条件を呑んでくれるなら…何でも言うことを聞いてあげる」

「…っ」


立ったまま、何かを考えるような表情をした蒼様がこっちを見下ろして、その目を優しくする。
魅入られたように、一ミリも身体を動かせない。

(…う、そ…)

信じられなくて、耳を疑った。
震える。
歓喜に、身体が…震える。


「あ、えと、」


どうしよう。
何を、言おう。
何を、してもらおう。

蒼様にしてほしかったことは沢山あって、今までそれをずっと夢に見てきたから、まさか叶えてもらえるだなんて、あり得ないと思ってたから。

どうしよう。どうしよう。嬉しい。嬉しすぎて、息ができない。

震える唇で、ようやく望みを、長年夢見ていた理想を…口にする。



「例えば…私との結婚を蒼様自身が望んで、蒼様の意思でしてくださる…とか」


そんなことを口では言っても、結局拒まれるのだろう。
受け入れるはずがない。

…そう思った、のに


「…いいよ」


微かに微笑んで頷いたその綺麗な顔に、

息が、止まる。


「…ッ、ぁ、本当、に…?」


どうしても信じられなくて、
確かめるように問う私の言葉は、受け入れられた。



「……――結婚、してもいいよ」



それはまぎれもない、蒼様の、言葉で、


(…っ、あ、ぁ…これが、幸せってこと、なんだわ…)


まるで幻を見ているような瞬間に、涙が零れた。

―――――――

これで、ようやく貴方と一緒になれる。
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