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何度も何度も求めていた存在を呼ぶ。
まーくん。
まーくん。
まーくん。
言葉にすればするほど、自分の中にある感情が大きくなっていくような気がする。
まーくんに必要とされればされるほど、自分が今ここにいるんだって実感できる。
だから。
もっとまーくんに俺でいっぱいになってほしい。
俺だけを見てほしい。
俺だけしか、その瞳に映らないようにしてほしい。
他のやつなんかどうでもいいって、俺だけいればいいって、…そう言ってほしい。
俺だけを、…他の全部を捨ててもいいって思えるくらい、俺だけを求めてほしい。
そんな気持ちで全身が押しつぶされそうになる。
その感覚は決して甘いものばかりではなくて、同時に痛いくらいの胸を締め付けて離さない。
…どうしてまーくんだけが、こんなにも俺を夢中にさせるんだろう。
「…世界に存在するのが、俺とまーくんの二人だったら良かったのに」
そうしたら、きっとまーくんは俺だけを必要としてくれて。
そうしたら、きっと俺はもうあんな気持ちにならずに、一緒にいられるようになるのに。
…でも、今ここにいるのは二人だけだから。
(嗚呼…俺とまーくんだけの世界は、なんて綺麗なんだろう。)
そう、思った。
「……もう二度と、手放したりしない。」
そうしてまーくんの髪を撫でながら笑みを浮かべようとして、
…できなかった。
「…、ッ、」
額から全身から汗が滝のように溢れる。
さっきから気にしないようにしていたけど、そろそろやばい。
げほ、と軽く咳き込むと、…あれ、なんか赤い色が飛び出てきた。
それにぜーぜーと気管支の調子が少しおかしい。
戻ってきた後にもう一度ちゃんと縫って処置させた場所が焼けるように熱かった。
ドクドクと嫌な音を鳴らす。
冬なのに何故か身体が異常に熱くて、息が苦しい。
「…早く起きないと、」
取り返しのつかないことになっちゃうよ。と冗談めいて囁いた。
腰を曲げて少し前屈みになる。
その前髪に軽く口づけた。
…と、
「…くー…く…?」
「…うん」
その瞼が眠たそうにゆっくりと持ち上げられる。
…起こしてしまった。
長い眠りから目覚めたばかりだからかな。
まだぼうっとして寝ぼけ眼な感じが可愛くて、…そう呼ばれる名前が嬉しくて、「おはよう」と少し上擦った声で話せば、
「おはよう…くーくん」
まーくんは安堵したように瞳を細めて、昔のようにあどけなく笑った。
――――――――――――
(そうして、)
(俺とまーくんは)
また、一緒に
壊れて
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