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「…っ、い、た…、…ッ゛、」

「……」


青紫色になっていた打撲痕を上書きするよりも更に濃く、鮮明に、新しく血の滲んだ印が刻まれた。
反射的に瞼が熱くなって涙が零れるくらい痛くて、…だけどそれ以上に、そうしてもまだ悔しそうに瞳を怒らせている彼の表情に息を呑む。


赤い舌で頬を伝う涙を舐められて、ぽつりと零される声。



「さっき言ったこと、嘘じゃないよな?」

「…なに、を?」

「まーくんが俺の、ってヤツ」

「う、ん。嘘じゃない」



ほとんど肩から落ちて意味を成していない浴衣の胸元の…何の傷もない場所に、悪戯をするように軽く唇が触れてくる。「なら、」と彼が囁いた。
伏せた瞼が震えているのが見える。



「本当に…その言葉通り、…俺のものって言うなら、」

「……」

「…優しくなんかしないで、まーくんを殴って、…痛めつけて、泣かせて、犯して、永遠に俺だけしか目に映らないように、…一生籠の中に閉じ込めておきたいって思ってるんだけど」



低く哀愁と嫉妬の響きを含むその声音によって零される吐息が胸に触れて、

そうしてもいい?と角度的に自然と上目遣いでこっちを見上げる。

彼は瞳を翳らせ、試すように嗤った。


「…これでも、まーくんは自分が俺のものだって言える?」

「…っ、」


自嘲気味な笑みを零して、寂しそうに微笑むくーくんに、自然と胸が締め付けられた。


「……うん」

「ッ、」


その背に腕を回して…強く抱きしめる。
よしよしといつもくーくんがしてくれるように胸に頭を抱き寄せるようにして撫でた。


それに対して驚いたような表情で、大げさなくらい震えるくーくんが、
こんなに大人っぽくて、しっかりしてて、凄く格好いいのに……どこか足りない子どもみたいなところがあって、だけどそういうところが凄く愛しくて、ああ、やっぱりくーくんだって思う。



「…いいよ、傷つけても」



珍しく自分より下の位置にある、黒くてさらさらの髪の上で手を往復させる。

…いい。大丈夫。

彼が望むなら、殴られたって蹴られたって、いいと思う。



何をされたっておれは、きっと、


「他の人だったら嫌なことでも…くーくんになら、嬉しいって思うから」


なんでだろう。それぐらい好きだってことなのかな。

初めて会ったときからその思いは増すばかりで、留まるところを知らない。


くーくんになら、何をされても構わないって思える。

……だって、あの日、おれはくーくんに奇跡を起こしてもらったんだから。
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