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それからもしばらく、べたべたにゃーにゃーとじゃれ合っていると、不意にくーくんが視線を下にずらして、「あ、」と声をあげた。

一緒にそっちを向くと、肩からずり落ちている浴衣のせいで、胸元どころかほとんど腕まで肌丸見え状態で



「言うの忘れてた。やばいから、…あんまりそうやって無防備な姿で部屋の外に出たらだめだからな」

「えー、これはくーくんのせいだもん!おれをがぶがぶするから!」

「…まぁ、まーくんの言う通り今はだけてるのは俺がさっき色々したせいだっていうのはわかってるけど」



いつも通り(?)の、…困ったような、気遣うような表情になる。



「身体も掻き毟って血だらけになっちゃってるし…あー、もう…」と包帯を巻いてないせいで色々と晒している身体に新しく包帯を巻いてくれたくーくんが、「…今更だけどごめん。長い時間一人にして」凄く痛そうな顔でぎゅっと抱きしめてくれる。


おれよりももっとつらかったはずなのに、なんでそんな顔をするんだろう、と不思議に思いながら「全然だいじょうぶ!」と首を振った。



「そういえば、これ、くーくんとおそろいだね!この白いの」

「うん。そうだね…って、また何やってんの」



さっき身体に巻いてもらったばかりの包帯を、でろでろでろーと解いて「へっへっへ!」と得意げに見せると困ったように笑ってまた巻き直された。包帯から消毒液みたいな匂いがツンと匂う。
…飲んだ薬?のせいか本当はもう痛くないんだけど、くーくんとおそろいだからまだ巻いていたい。


(くーくんは本当に心配性だなー。)



でも、それが凄く嬉しく思う。今までこんなふうに怪我しても構ってくれる人なんかいなかったからかな。



「ね、くーくんの包帯も巻き直してあげる!」とその身体に巻かれている包帯のさきっちょを掴んで、ほれほれあーれーと時代劇みたいにぐるぐるさせようとすると、「いや、いい」とあっさりと拒否された。しょ、ショック。



「な、なんじゃい、その疑ってるような目は…!」

「…まーくんがやるともっとぐちゃぐちゃになりそうだし」



悪戯っぽく笑うくーくんに、ぐ、と顎を引く。



「う、うぐぐ…」

「…なんて、嘘だよ。まーくんが俺のために何かしようとか、考えなくていいんだよ」



ぎゅうって優しい言葉と一緒に腰に回された腕で、身体を包みこむ体温。
優しい温度と、温かい声音が心の奥に触れてくる。


「その代わり、もっともっと甘えてほしいな」

「…甘えてばっかり、じゃない?わがままばっかり言ったら…嫌じゃない?」

「うん。まーくんのわがままなら、どんなことでも聞きたい」

「…っ、くーくん、大好き!!!」



抱き付いて、その首筋をがぶがぶすると対抗するようにくーくんも同じことをしてきて、お互いの首筋に血が滲むほどの歯形がつく。
…おれのは見えないけどすっごくズキズキするし、少なくともくーくんのには歯形がついた。



「へへ、おそろい、…ひ…っ、」

「……」


噛まれた場所をぬるりとしたもので舐められて、高い声が上がる。
し、染みて痛いしなんか変な感じがする!
吐息もふっとわざとらしくそこにかけられて、ゾクゾクと身体が震えた。



「…白くて綺麗なまーくんの首筋に血の滲んだ歯型の傷跡って、見てるとやばい気分になってくる…」

「く…くーくんの、えっち…」

「まーくんは俺のだから、俺のって印数えきれないくらいつけたい」

「…っ、ん、ん…っ、や、…っ、」


胸元の浴衣の端を掴んで、ぐいと開かれ、もう一度歯で噛んだ後に唇で強く吸い付かれる。
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